ギリシャがユーロ圏から離脱するかどうかが問題になっている。

ユーロとは欧州連合(EU)のうち17カ国で使われている通貨で、ギリシャはその一つ。

ところが、2009年になってギリシャ政府が深刻な財政赤字を隠蔽していたことが発覚し、ギリシャ国債の利回りが急上昇してしまった。

そこでEU各国は、ギリシャの信用不安を回避するために、緊急融資を行うことになり、一部は実行された。

しかし、融資を行う条件として、ギリシャ政府は大幅な歳出カット(緊縮財政)などで財政再建を行うこととなった。

しかし、それはギリシャ国民の4人に1人と言われる公務員の給料の削減や、現役時代の96%ももらえるという年金支給を減らすことを意味するため、国民は猛反発。公務員を中心にストライキを繰り返すことになってしまった。

ギリシャは、緊縮財政を受け入れるかどうかで、国論が二分された形になったのだ。

そんな中で今年5月にギリシャ議会の総選挙が行われたが、緊縮財政を進めてきた連立与党の新民主主義党と全ギリシャ社会主義運動は過半数割れで敗北。緊縮財政に反対する急進左翼連合が、第二党に躍進した。

その後、新たな連立政権をつくるべく協議が重ねられたが、合意に至らず、結局、6月17日に再度選挙を行うことになった。

緊縮財政を受け入れる政党が勝利すれば、ギリシャはユーロ圏にとどまる。

しかし、反緊縮財政の政党が勝利すれば、ギリシャはユーロ圏から離脱する可能性が高まる。

ギリシャがユーロから離脱すれば、同じく財政赤字に苦しむスペインやイタリアにも波及する可能性が高いため、ユーロそのものの危機につながる。

それを受けて、アメリカのワシントン郊外で開かれていた主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)が注目されていた。

19日夜に採択された首脳宣言では、ギリシャが「ユーロ圏に残ることへの関心を確認」した。また、「成長及び雇用の促進は必要不可欠だ」とも明記し、「緊縮財政一辺倒」のスタンスではなくなっている。

しかし、このどっちつかずの微妙なスタンスこそ、EUの苦しみが象徴されている。

緊縮財政も成長も必要。しかし、どちらが優先なのかは明言できない。ギリシャを断固ユーロ圏にとどめるべきか、断固離脱させるかの決断もできない。結局、ギリシャの次の再選挙の様子を見て……と判断を先送りしているのが実情だ。

まさに誰にも答が見えなくなってしまった状態の中で、改めてユーロは発足以来最大の危機を迎えている。

それは、国家の主権を脇に置いたままの経済統合の無理、文化・経済・言語の壁を無視した経済統合の無理、払えもしない社会保障を政治的に約束してしまったことの無理、これらの矛盾が解決できないまま先送りされ、ついに破綻を迎えようとしているわけだ。

ギリシャのユーロ圏離脱問題は、大きな文明実験の終焉を意味するのかもしれない。(村)

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2012年5月16日付本欄 連立難航でギリシャ再選挙へ 「増税不況のギリシャ」の後を追う野田首相

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2012年2月5日付本欄 ユーロが南北に分裂する?

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3788

2012年2月号記事 EU首脳会議 財政規律強化で 崩壊のレールは敷かれた "Newsダイジェスト"

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