ユーロ解体論がようやく出始めた。

2月5日付産経新聞で編集委員の田村秀男氏が「ユーロは解体の道に踏み出した」と論じている。

昨今、ドイツがギリシャに緊縮財政や財政主権の放棄を要求したことに対し、ギリシャが拒否し続け、対立構造が深まっていることが背景にある。

田村氏はこの論考で、ユーロが利益になる「北」と、ユーロが重荷になる「南」との対立関係は修復できないと結論づける。そして、ギリシャは、以前の通貨「ドラクマ」に復帰し、思い切ってユーロの10分の1の水準に切り下げるべきだと言う。

その場合、ギリシャだけでなく、ポルトガルやスペイン、イタリアら「南」の各国もユーロから離脱する可能性がある。少なくともドイツは、南欧抜きでユーロの再結束を図る覚悟を固めたと分析する。

田村氏の分析は十分あり得るシナリオだろう。

しかし、ユーロが南北に分裂した場合、ユーロ導入のそもそもの目的自体が喪失する。EUもそうだが、ドルや円、アメリカや日本経済へ対抗することが目的だったはずだが、分裂すれば、その可能性は消える。

壮大な文明実験は失敗したと断定してよさそうだ。

後知恵だが、どうせなら統一通貨「ユーロ」を導入するより、ドイツマルクを国際通貨化した方が、まだ可能性はあったかもしれない。しかし、それはフランスなど他国が許さなかっただろう。

ユーロの問題は、「国民国家とは何か」という問題を我々に突きつける。その意味で、ユーロ解体の影響は、単に経済だけの問題ではないと言える。(村)

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2012年2月号記事 EU首脳会議 財政規律強化で 崩壊のレールは敷かれた "Newsダイジェスト"

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3590