総選挙後に組閣が難航していたギリシャでは、連立交渉が不調に終わったことで、近く再選挙が行われることになった。

ギリシャでは選挙後にまず第1党が組閣に取り組むが、内閣が発足できない場合には、次に第2党に組閣の権利が移る。もし第3党までで内閣が組めない場合は、再選挙になる。

6日に行われた総選挙では、欧州からの財政支援の条件となっている緊縮財政に反対する政党が大幅に議席を伸ばし、過半数に達した政党はなかった。9日間にわたる連立交渉が行われたがどの党も合意は得られず、大統領府は15日に再選挙が決まったと発表した。

6月中旬にも行われる再選挙では、緊縮財政に反対する急進左派連合(SYRIZA)が第1党になる見通しが強い。もし財政再建策を否定する政府が成立した場合は、海外からの支援が途絶え、債務のデフォルトとユーロからの脱退も現実味を帯びてくる。

フランスでも政権交代が起こったが、不況を無視した欧州各国の借金返済プロジェクトは、明らかに挫折しつつある。

財政危機が露呈して以来、欧州では「市場の信認」を増すことで財政再建を行えるという理論が広がった。増税や歳出削減で政府の借金を減らせば、市場はそれを信用して投資してくれるから国債金利は下がる。そうすれば経済成長もできるという理論だ。

しかしヨーロッパの政治の現実が証明したのは、これとは違う筋書きだった。つまり、不況のさなかに増税や歳出削減を行えば景気が悪化し、借金は逆に返せなくなる。生活が苦しくなった有権者は、選挙で政府を追い出し、結局は新政権が景気対策を優先することになる。

日本では野田佳彦首相が消費税引き上げに「不退転の決意」を示しているが、欧州の例に当てはめれば、自分で自分の政治生命を短くしているだけである。菅直人前首相は財政危機で「日本がギリシャになる」と怖がったが、それとは異なる意味で日本がギリシャになる日は近いのかもしれない。

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