北朝鮮からの送金がストップしたため、金正男氏が長期滞在していたマカオのホテルから追い出されたことを、ロシアの週刊紙「論拠と事実」(ネット)が15日に報じていた。

現地のホテル関係者の話として、最近、正男氏が滞在費1万5000ドル(約120万円)を払えずにホテルから退去させられ、担保としてホテルに預けていたクレジットカードの口座にも残高がなかったことを紹介している。

同紙は、正男氏の「(弟の正恩は)権力の座に長くはとどまれない」などの批判的な発言に対する懲罰の意味があるのではないかと分析。しかし、その後も正男氏の姿が、マカオのカジノなどで目撃されていることから、今後、正恩氏による新体制が倒れた場合の後継者として、中国が正男氏を保護し続けていると見ている。

これと前後して、金総書記の誕生日の前日の15日には、北朝鮮政府が将校クラス23人の人事を行い、強硬派の金英徹(キム・ヨンチョル)偵察総局長が、上将から大将に昇進するなどした。

この金英徹氏は、2009年以降に起こった韓国の哨戒艦爆破事件など、韓国やアメリカに対する軍事的な挑発行為を指揮した人物として知られている。哨戒艦事件当時、韓国側は、北朝鮮政府が金英徹氏を解任すれば、それは南北関係の改善の意思表示になると見ていたほどの重要人物だ。

北朝鮮では、4月15日に金日成生誕100周年を迎え、その10日後の北朝鮮軍創設記念日には軍事パレードが行われる予定。最近の、正男氏への送金ストップや人事異動などの一連の動きは、正恩氏が4月の式典までに軍部を掌握し、国内を統率するための準備と見ていいだろう。

だがその一方で、北朝鮮ではデノミの失敗や慢性的な食糧不足などが続き、人民の不満は高まっている。また昨年以降、北朝鮮内の大学や市場の壁に「世襲は社会主義への裏切り」「金正恩を打倒せよ!」などの落書きが書かれたり、金総書記の生母・高英姫(コ・ヨンヒ)の銅像が壊されるなどの事件が相次いでいる。

現在、北朝鮮国内は極めて不安定な状況にあることが想像できる。(居)

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2012年2月16日付本欄 ヘリ墜落で要人ら5人死亡。事故? 粛清? 北朝鮮の「終わりの始まり」?

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