政府は、6月末にまとめる「社会保障と税の一体改革」案に関連し、国の財源不足が2015年に年間10兆円超に上るとの試算を公表する検討に入った。21日付日本経済新聞が報じている。

試算は、菅直人首相が議長を務める6月初旬の社会保障改革に関する集中検討会議で、与謝野馨社会保障・税一体改革担当相が試案として提示する。

試算によれば、15年に財源不足になると考えられる10兆円超のうち、8兆円は年金や医療など社会保障改革に伴う必要経費で、少なくとも2兆~4兆円程度、基礎的収支の赤字半減に必要としている。これは消費税5%分に相当するとして、与謝野担当相の試案では、消費税率の引き上げを明記すると見られている。

だが、消費税5%分に相当するといっても、消費税を上げれば購買意欲が下がるため、5%上げたからといっても単純に税収が5%分増えるわけではない。

また一方で、内閣府が6月初旬に公表する消費税引き上げに関する研究報告書案でも、消費税率は「段階的な引き上げが望ましい」と明記。消費税が経済に与える影響は、消費税率を3%から5%に引き上げた1997年の景気動向の分析を理由に「景気後退の主因となるほど大きなものではない」としている。

だが、94年以降増えていた税収は98年以降減少しており、これはとりもなおさず景気後退を示している。さらにさかのぼれば、消費税を導入したときも、導入した89年は税収が上がったが、その後下がり、94年には消費税導入前の水準にまで落ち込んでいる。現在また消費税を引き上げれば、大震災と節電の影響も相まって、さらに景気が悪化するのは明らかだ。

こうした消費増税(しかも5%も)を正当化しようとする政府の情報に騙されてはいけない。(吉)

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