オバマ大統領は19日に行った中東政策についての演説のなかで、第三次中東戦争以前の境界に基づいて和平交渉を再開すべきとの考えを表明し、同盟国イスラエルに譲歩を迫った。

イスラエルは、第三次中東戦争で占領したヨルダン川西側への入植活動を進めてきたが、今回のオバマ大統領の演説はこの占領地からの撤退を求めることを意味する。イスラエルのネタニヤフ首相は「(イスラエルを)防衛不能にする」と強く反発し、20日の訪米でのオバマ大統領との会談でも明確に拒絶の意思を示した。イスラエル主要紙の大半が「対立」の見出しを掲げて、対米関係が緊張状態に入ったと報じている。

オバマ大統領が今になって、イスラエルに妥協を迫るようになった背景には、チュニジア、エジプトに端を発する中東・北アフリカ地域の民主化デモの矛先が、イスラエルに及んできていることが挙げられる。実際、パレスチナ自治区ガザやイスラエルが占領するゴラン高原で、「反イスラエル」を掲げる民衆デモが発生している。オバマ大統領は今回の演説でも、民主化デモへの全面支援を約束しており、これを中東和平へのアプローチにする考えだが、米国内の親ユダヤの存在を考えればイスラエルを見捨てることはできないはずだ。

大川隆法・幸福の科学グループ創始者兼総裁は、2月13日に行った講演「セルフ・ヘルプと愛国心」のなかですでに、今後の中東情勢をこう予言していた。「エジプトはイスラエルがアラブから攻撃を受けないように、アメリカがかなりてこ入れしていた国ですが、オバマ大統領はあっさり民衆の革命に賛同しました。アメリカの地球レベルでの統治能力が衰退に入っています。イランの次はサウジアラビア、エジプトも核武装するでしょう。イスラム教国でイスラエルを囲む包囲殲滅戦が起きる可能性が高まりました(大意)」

オバマ大統領の和平を目指した中東政策は、実際、場当たり的なものになっている。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は19日、オバマ大統領の中東政策について「当事者への事実上の丸投げ」と批判した。オバマ大統領が見せる「民主化」の夢は、中東にさらなる混沌をもたらすのではないか。(雅)

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