枝野幸男官房長官が16日の記者会見で、東京電力の発電事業と送電事業の分離について「選択肢としては十分あり得る」と述べ、経営形態の見直しに言及した。この問題については民主党の玄葉光一郎政調会長(国家戦略相)も15日、同様の考えを示している。

二人の発言は、「東電が損害賠償の原資として、送配電網という資産を売ればいい」という発想から来ている。

しかしこの発送電分離は、単なる損害賠償の問題ではない。発電事業と送電事業が分離され、さらに発電事業への新規参入が進めば、電力の自由化が一気に進む。

イギリスのサッチャー政権は90年に国営電力会社を発電会社と送電会社に分割・民営化し、発電事業への参入を自由化した。アメリカも同時期に発送電分離が進んだ。日本でも90年代に一部取り入れられたが、東電など大手電力10社に支払う送配電網使用料が高く、電力売買市場は拡大しなかった。

発送電分離が実現すれば、今回のように電力供給が大きく落ち込んだ場合、大型の自家発電設備のある工場が送電会社に余った電力を売ったり、同じ企業クループ内で電力の融通がしやすくなる。日本全体の電力総量が格段に増え、電力不足はあっという間に解消できる。

こうした電力自由化には、地域独占の大手10社が反対してきたが、製紙や製鉄、化学など電力使用量が多い企業とっては新たなビジネス・チャンスになり、大賛成だ。今夏の電力不足を見据え、「東電にどれぐらい電力を売ればいいか」と待ち構えているが、東電は「他業種からの購入は最小限に抑える」と頑なな態度を崩さない。

これだけの電力不足を起こして首都圏住民に不便を強いながら、既得権を守り続けることは、もはや許されないだろう。今や大手電力による地域独占体制そのものが、日本の電力供給のボトルネックとなっている。(織)

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【5月16日分ニュースクリップ一覧】
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