30日付インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙に、中国国内における外国人がらみのニュースが2件、並んで出ている。

フィリピン政府は中国政府に、30日に中国で死刑執行が予定されているフィリピン人3人の刑の執行を猶予するよう訴えている。3人の容疑は中国国内における麻薬運搬だが、うち少なくとも1人は知らないうちに運び人にされた可能性があるとの新たな証拠が出たためだ。中国政府の姜瑜報道官は「3人は法に基づいて裁判にかけられ有罪とされた」としている。同紙は「3人が速やかに刑執行されれば、労働人口の10%が海外に出ているフィリピンの国民感情への影響はきわめて大きい」としている。

一方オーストラリア政府は中国政府に、中国内で消息を絶った中国生まれのオーストラリア人作家、楊恒均(Yang Hengjun)氏(46歳)に関する情報を求めている。楊氏は中国と米国の間のスパイ活動を描いたネット小説を出版しており、政治的問題を綴るブロガーとしても影響力を奮ってきた。同氏は今月27日に中国の空港からアシスタントに電話で「3人の男につけられている」と話した。その後、妹に「昔の友だちと話しこんでいる」と短い電話をしたが、これは予め決めてあった「秘密警察に拉致された」という暗号だという。中国外務省は同氏についての情報はないとしており、姜瑜報道官も「そういう人物は知らない」と述べた。

2つの件は性質が違うが、フィリピンとオーストラリアの政府が中国政府にきちんと申し入れをしているのは当然の姿勢だ。日本人が中国内で同様の境遇に陥った場合も、日本政府は然るべき対応をしてほしい。そして中国政府は世界の大国を自負するなら、刑事被告人の人権や作家の言論の自由を最大限に尊重すべきである。(司)

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