一進一退が続く福島第一原発だが、この事故は人災の側面が強いと、30日付け朝日新聞が報じている。

記事では、設備の安全設計の問題や、非常時の想定の甘さを指摘。原子炉を冷却するための海水をくみ上げるポンプ設備が「ほぼむき出しの状態」になっていたため、津波で損傷。原子炉に冷却水を送る機能が失われた。他にも、当初、雑なところが多かった配管の改良工事が追いつかなかった点や、2006年の耐震指針の見直し後の対応が、津波よりも揺れ(地震)に対する強さの検討が優先されていたと指摘する。

一方、同じ規模の津波が襲った宮城県の女川原発はほとんど無傷で、原発の周辺施設に避難してきた人もいた。この女川と福島の原発の違いは、「想定していた津波の高さの違い」にある。

福島原発は、津波の高さを最大5.6mと想定して設計したところに14mの津波が襲った。これに対し、女川原発は津波を9.1mと想定し設計、主要施設は海面から14.8mの高さの敷地に整備した。そこに17mの津波が襲ったが、建屋の地下に浸水はあったものの主だった被害はなかった。(参考:25日付け産経新聞など)

こうした事実からも分かるように、津波の高さをもっと高く見積もったり、電源が波の影響を受けないように囲うなどすれば、今回の大規模な事故は防げていたのではないか。逆に言えば、今後、原発の安全性を高めていけば、今回のような大規模な津波が襲っても、日本の原子力発電所はびくともしないということだろう。

事故を受け、国内マスコミは「原発はなくすべき」という論調に傾きがちだ。しかし、少量のウランで膨大な発電ができる原子力発電を捨てることは、石炭や天然ガスなどエネルギー資源の9割を輸入に頼る日本にとって、生殺与奪の権を外国に握られることを意味する。やはり、日本は原子力発電を捨ててはいけない。(格)

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