オバマ米大統領は28日のテレビ演説で、リビア問題について軍事作戦開始後初めて米国民に向けて見解を述べた。

オバマ氏は作戦のこれまでの成果を強調した上で、軍事作戦の目的を市民の保護に限定し、カダフィ氏退陣は非軍事的手段によって進めると表明。米軍は諜報活動など側面支援に徹すると述べ、作戦の拡大がないことを強調した。

またオバマ氏は、安全保障上の直接の脅威でなくとも、アメリカの利益と価値観が危機にある時には軍事行動も辞さないが、各国の協調のもとに活動は進めるべきだという方針も示した。

「オバマ・ドクトリン」が示されたと評価する声もあるとはいえ、カダフィ氏に退陣を迫った自身の以前の発言と、作戦拡大を懸念する国内世論への配慮をバランスすると、このように妥協の演説となるのだろう。

29日付の米紙ワシントン・ポスト社説が「幸運に頼る以外の戦略が欠けていた」と論じたとおり、カダフィ氏排除を目指すにしても、その具体的な戦略は浮かび上がってこなかった。

29日付米紙ウォールストリート・ジャーナル社説は、「この動乱にあたって、オバマ大統領は必要以上に、そして恐らくは危険なぐらいに受け身である」と論評している。

後手後手といえば、今回の演説にしても、国民への説明が足りないとせっつかれた結果、セットされたという形になってしまった。軍事作戦に際して、米軍と納税者の負担は少ないからと大統領が釈明する光景は、「世界の警察官」という看板がまさにはがれかかっているのを見るようである。

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