アメリカの保守系シンクタンクAIE日本部長のマイケル・オースリン氏が3月3日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙で、ロシアの北方領土での軍備強化に関連して、「ロシアが恐れるのは日本ではなく中国」という論考を書いている。要点は以下の通り。

・ メドベージェフ大統領とプーチン首相はロシアの長期的な敵は中国だという基本原理に立っている。日本とロシアは新しい危機から両国の関係を守る必要があるし、中国による安全保障上の脅威に協力して対処しなければならない。

・ 中国人が極東ロシアの貿易のほとんどを押さえている。地政学的にシベリアへの中国の影響力は、ロシアの人口減少につれて大きくなり、将来、中国政府は独自の権益を持つようになるだろう。

・ これがロシアが(北方領土で)海軍兵力を増強している誘因である。日本はロシアと中国によるシャドー・ボクシング(けん制)の引き立て役だ。これを理解すれば、ロシアと日本はアジア太平洋の地政学的環境について協議できる。

・ 中国が北極海経由の航路を利用するようになれば、中国海軍もそれに伴って進出してくる。ロシアもこれを懸念している。日本は南西諸島だけでなく、北方でも中国の軍拡に脅かされる。ロシアとこの地域の軍拡問題について話し合うときに、経済的関係にも波及する。ロシアにとってはシベリアでの中国の貿易支配を軽減でき、日本はこの地域で現状維持を図ることができる。

極東ロシアの人口は約650万人。ソ連崩壊後20年で約150万人減少している。これに対し、隣接する中国の東北3省の人口は約1億1千万人。そこからあふれ出して極東ロシアに移り住んだ中国人は200万人以上とされる。

ロシアが、極東やシベリアの「中国化」を恐れて、北方領土での軍備増強に動いているのであれば、日本の対処法はオースリンの提言する通りということになる。(織)

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