中国・四川地震の死者・不明者数は200人を超え、被災者数は200万人を超えている。この地震をめぐり、中国政府は海外からの救援の提案を断り、メディアを使って政府の救援活動をさかんに報道させている。だが、7月の経済破たんを予想する声も上がる中で、その救援活動のアピールは一党独裁体制を維持しようと焦っている姿にも映る。

地震の起きた4月20日の午後には、李克強首相、汪洋副首相、楊晶国務院秘書長ら党中央執行部が被災地入り。中国内のテレビや新聞は、李首相が「救命が最優先だ」などと指示を出す姿を繰り返し報じ、また、政府の救援の美談を連日報道している。

ある被災地では、支援物資を運ぶトラックに子供たちが駆け寄り、「政府に感謝!」と書かれた段ボールを掲げ、「ありがとう」と叫んだ。その様子を、地元テレビ局が取材していたが、トラックの運転手は「やらせだ」と語ったという(4月28日付産経新聞)。

また、地震の翌日には日本をはじめとする諸外国が救援隊の派遣を提案したが、中国政府はすべて断っている。海外メディアの取材も制限し、中国政府に都合のいい情報だけを発信しようと躍起になっている。

その一方で、中国経済には危うさがつきまとっている。不動産バブルの崩壊と地方政府の債務危機については、以前から大きな問題として指摘され続けてきたが、とうとう「中国経済が7月に崩壊する」という論文を習近平国家主席のブレーンの1人が発表し、中国政府内で話題になっているという報道も出てきた(「週刊現代」4月30日発売号)。

さらに今、中国では、都市と地方の経済格差、共産党幹部の汚職問題、PM2.5や鳥インフルエンザといった環境・衛生問題など、政府への不満・不安の材料は枚挙に暇がなく、国民の不満は高まっている。

こうした背景を考えると、中国政府が四川地震を利用して、少しでも国民の不満を和らげ、支持を取り付けようと躍起になっている姿が浮かび上がってくる。

しかし、そうした中国政府の本音を国民は見透かしているようで、被災地では、政府の救援活動の美談が「やらせ」であるという批判や、外国の救助隊が来ていれば多くの命が助かったという批判が噴出しているという。

今回の中国政府の対応は、党への求心力を高めるどころか、低下させている可能性が高い。四川地震は、一党独裁体制の足元をぐらつかせるきっかけとなるかもしれない。(居)

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