アラブの春に触発された反政府デモが続くイエメンでは25日、首都のサーナで反体制派と治安部隊が衝突し、3日間にわたって続いている戦闘での双方の死者は合計で48人となった。湾岸協力会議(GCC)の仲介で調印間近と見られた、サレハ大統領の退陣を含む調停案にも、サレハ氏側は応じない姿勢を崩していない。

23日付の米誌アトランティック(電子版)では、新アメリカ安全保障センターのジョン・スタスター氏が、「アメリカはサレハ氏を早期に退陣させ、包括的なサレハ後の政府をめぐる交渉を促すべきである。サレハ氏退陣は不可避だが、退陣要求に失敗すれば、戦闘は激化し、長引くことになるだろう」と論じている。同氏は外交的なアプローチを主張するが、それは他の有効な手がないことも示唆している。加えて同記事は、イエメン軍は地上部隊を中心に動いている以上、リビアのような飛行禁止区域の設定は難しく、また対テロ戦争におけるイエメンの重要度を考えれば、アメリカは見過ごすわけにはいかないとも述べている。

サレハ氏は、自らが退陣すれば内戦が発生すると繰り返し警告している。危機感を煽ることによる延命のレトリックとも見えようが、その分析はあながち間違いというわけではない。南部に独立勢力を抱える上、アラビア半島のアルカイダ(AQAP)が勢力を拡張する現状では、安易に権力の空白を作れば、最悪のケースではイエメンが「ソマリア化」する懸念もくすぶる。リビアに続く軍事介入が困難であるからには、まだ当面は事態の進展を見ながら、外交プロセスによって政府側と反体制側の対話を促し、調停策を探ることになるのかもしれない。

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