東日本大震災を通じて、日本政府の「対中配慮」が浮彫りになっている。最大額の義捐金を提供した台湾は公式の感謝声明で言及されず、菅首相は中韓首脳を被災地に招いて首脳会談を行ない、「友好」ムードの演出に余念がなかった。

こうした日本政府の近隣外交のスタンスについて、元米国防総省スタッフで安全保障コンサルタントのジョセフ・ボスコ氏が、5月27日付の米紙クリスチャン・サイエンス・モニター(電子版)で、日本は過度の対中配慮を改め、日台関係を強化すべきだと以下のように論じている。

  • 東日本大震災を受けての対日援助で、台湾は米韓をしのぐ最大額の援助金を提供した。しかし、日本政府が発表した感謝声明に台湾の名はなく、中国政府が主張する「一つの中国」に、日本を含めた各国政府が敏感になっていることが明らかになった。
  • 中国の機嫌を害してもさして重大な結果につながらない今回のような場面で、日本は台湾を易々と傷つけてしまった。このことは、米中の国益が相克する東アジアでのより重要な安全保障問題に対する、日本政府のコミットメントに疑問符を付けた。
  • 台湾は随一の親日国であり、昨年の世論調査では、52%の回答者が最も好きな国として日本を挙げ、アメリカの8%、中国の5%を圧倒した。しかし日米は台湾を見捨てる形で、1970年代に相次いで中国との国交を樹立。国際社会では、感染症研究への台湾の科学者の貢献に関わらず、中国が台湾のWHO(世界保健機関)入りを阻むなど、中国による台湾への嫌がらせが続いている。
  • アメリカの同盟国として、日本は台湾の事実上の独立維持を含めた地域の安定維持にとって、重要な役割を担っている。問題の大小に関わらず、中国からの圧力を受け付けない姿勢を見せられなければ、日本の権威と長期的な安全保障が危機に陥る恐れもある。

筆者の結論は台湾の呼称に関するものだが、言わんとしているところは、中国への過剰な配慮が、日本の国益を害するということである。シーレーンの防衛などの問題を挙げても、台湾の独立維持は、日本の存立に関わる重大問題である。真の「トモダチ」は誰なのかを、よく見極めなければならない。

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