世界最多といわれる兵員230万人を誇る中国が、人民解放軍のスリム化加速に乗り出すと、14日付の日経新聞が伝えている。

記事では、4月、胡錦濤・国家主席が「2020年までの軍隊人材発展計画綱要」をまとめ、IT技術や新しい兵器を使いこなせる人材の確保を関係部局に指示。「時間をかければ、150万人規模までに減らせる」という解放軍の元少将のコメントを紹介している。

背景には、増加を続ける国防費の問題があり、09年の支出は公表されているものだけでも4951億元(約6兆2400億円)、前年比18.5%増となっている。近い将来、超高齢化社会を迎える中国では、医療費や年金などの社会保障支出の急増が避けられず、財源確保が急務だ。

ただ、「スリム化」で周辺国が安心できるわけではない。空母「ワリャーグ」や次世代ステルス戦闘機「殲20」の開発のほか、戦略ミサイル原子力潜水艦の配備や、空母キラーの対艦弾道ミサイル「東風21D」の配備などからも分かるように、兵器の高度化や陸海空3軍の連携強化などによって全体の戦力は向上する。

今回、胡主席が軍の改革を打ち出した裏には、習近平・国家副主席に政権が移行する2012年以降も軍への影響力を維持する狙いがあるという。2012年には、中国のみならず、ロシアや韓国、台湾など日本の周辺国で大統領・総統選が行われるが、ロシアのプーチン大統領や韓国の李明博大統領が、北方領土や竹島の開発を進めるのは、再選を狙った国内向けのアピールの一環だ。

であるならば、移行期に入る中国も、胡主席、習副主席の双方が日本を出汁にして国内の支持を得ようと考えてもおかしくない。人気取りのために利用されるのはいい迷惑だが、日本がなめられているのは現実だ。それに対する「備え」を急がなければならない。(格)

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