先月末、インド国防省が126機の多目的戦闘機の購入候補に、フランス製の「ラファール」と欧州の共同開発機「ユーロファイター」が残り、米国の戦闘機が選定から漏れた。

この動きについて、13日付ウォールストリート・ジャーナルが「米印軍事協力の今後」と題して論説を載せている。以下、要旨をまとめる。

  • コンペの参加企業であるボーイング社とロッキードマーティン社同様、米国政府はこの決定に驚いた。というのも、ここ5年以上米国はインドに多大なる投資をしてきたし、このコンペが米印軍事協力の盛り上げやインドの今後の戦略の方向性になると見ていたからだ。しかし、これは米国にとってインドの考え方を理解するカギとなる。そしてまだインドにとっても米国が急速に発展している双方の関係を超えて何を欲しているのか理解するカギとなる。

  • 10年弱、米国とインドは、インドがどの国よりも米国と軍事演習や防衛取引を行うことで関係を築いてきた。この売買は、インドの軍事力を上げるだけでなく、何千もの仕事を生み出し、米国経済にも貢献するだろう。

  • 米国からすれば、この関係構築のペースは決して速くはなかったが、インドの安全保障関係者からすればあまりに速すぎた。結果、インドは今回の戦闘機の選定で、戦略的自主性を維持し、特定の一国とあまり緊密になりすぎないようにするというインド政府の外交政策を示したのだ。

  • ここで、両国は米印パートナーシップへの期待を調整する必要がある。米国は今回の挫折によって、インドの外交方針を理解しつつ、インドとのより緊密な防衛関係の追及をやめるべきではない。インドは今後5年間で軍備の近代化に800億ドル費やす計画があり、米国はより深い防衛関係を築くために将来の取引に目を向けるべきだろう。

  • インドも、米国がインドに軍備品を売るのは、単に米国の企業利益や雇用のためではなく、将来のパートナーが共同の戦略的利害に協力して対処できるよう軍事能力を開発するという大きな目的のためであるということを理解するべきである。

  • 米国もインドも、21世紀の複雑かつ変化し続ける安全保障環境において互いを必要としており、防衛取引の勝敗結果や不均衡なパートナーシップへの懸念によって、米印関係が持つ潜在力の発揮を妨害するようなことを許してはならない。

これまでの米国との協力関係もおかまいなしに、自立した防衛力をつけようとするインドの考え方に日本は学ぶべきところがあるのではないか。そして、変化し続ける世界のなかで、日本も防衛力を高めておくことは、今後米国やインドにとっても有効なことだろう。(吉)

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