4日に紹介したハーバード大のスティーヴン・ウォルト氏と同様、リアリストの国際政治学者に分類される米シカゴ大政治学部のロバート・ペイプ教授(安全保障論、テロリズム研究)が、オサマ・ビンラディン死去後のテロ戦争の対処法についてインタビューに答えている。以下はそのポイント(シカゴ大学のウェブサイトや、シカゴのニュースサイト「WBEZ91.5」などより)。

  • アメリカはすぐさまアフガンやその他のイスラム諸国からの地上軍の撤退を始めるべきである。
  • この10年間、イスラム諸国への米軍駐留が続くほど、平和になるより、問題が起きている。今こそ、この地域にいる米軍が撤退する時だ。米軍が撤退しなければ、(バラバラになっている)アルカイダが再結成されるだろう。
  • 今回の米軍特殊部隊の攻撃によって、アルカイダのメンバーが報復を仕掛けるかどうかの局面に入った。今はアルカイダを将来にわたって撃退するチャンスである。

この議論は、アメリカはイスラム諸国に駐留するのではなく、域外から軍事的な影響力を与えるべきだという「オフショア・バランシング」の考え方。先のウォルト氏やミアシャイマー・シカゴ大教授らと同じ考え方で、「アメリカはユーラシアから兵を引き、インドのディエゴ・ガルシアやグアム、ハワイ、沖縄などから必要があれば一時的に介入して、世界のバランス・オブ・パワーを維持すべし」というものだ。

現在のアメリカの安全保障政策は中東に深入りしすぎているという前提がある。もしこれが実行されるならば、アメリカは東アジアでの中国の軍事的台頭にも十分対応できるようになるので、日本にとっても望ましい政策だ。ビンラディン殺害を機に、オバマ大統領が中東政策の舵を大きく切るのかどうか転換点に立っている。(織)

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【5月5日分ニュースクリップ一覧】
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