中東情勢が複雑化する恐れが出てきた。

27日、パレスチナ自治政府の主流派ファタハと、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスは、数年来の対立関係を解消して挙国一致政権を樹立することで合意したと宣言した。この動きをどう見るべきか、29日付インターナショナル・ヘラルド・トリビューンの記事を要約紹介しながら考えてみたい。

・  パレスチナはアメリカ主導によるイスラエルとの和平交渉を信頼できなくなっていた。そこへ来て今回のエジプト革命で親米ムバラク政権が倒れたので、アラブの盟主エジプトに頼る姿勢を強めたわけである。今回の合意がエジプト暫定政府の仲介によりカイロで実現したのもその表れであり、アラブ世界の変動とりわけエジプト革命がパレスチナ情勢に具体的に影響を及ぼした最初の事例となった。

・  イスラエルは、今回のパレスチナ統一の動きが中東和平に向けた対話を危うくすると非難している。理由は、イスラム原理主義ハマスがイスラエルを消滅させたいと考えているからだ。イスラエルのネタニヤフ首相はテレビ番組で「パレスチナ当局はイスラエルと和解するか、それともハマスと和解するか、二つに一つを選ばなければならない」と述べた。

・  イスラエル当局はパレスチナ自治政府のアッバス議長に、ハマスと手を結ばないよう警告していたが、アッバス議長は「我々にはハマスが必要だ」と言ってその警告を蹴った。ハマス側がファタハに接近した理由としては、ハマスの本拠地があるシリアで反政府運動が起きており、バシャール・アル・アサド大統領が政権を失えば、もはやシリアを活動拠点や資金・武器の供給地として利用できなくなるという事情もある。

幸福の科学の大川隆法総裁は、世界がエジプトの「民主化」に沸いていた2月の時点で「エジプトの親米政権が倒れたことで、イスラム教国によるイスラエル包囲殲滅戦が起きる可能性が高まった」と述べていた。エジプトの仲介による今回の動きは、まさにその可能性が一歩高まったことを意味する。イスラム世界とユダヤ教という二つの一神教文明がぶつかるハルマゲドン(最終戦争)を回避するため、中東情勢を注視する必要がある。(司)

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