8日付朝日新聞で、昨秋から内閣府行政刷新会議で規制改革に取り組んでいる岡素之・住友商事会長が「官僚たちよ、この危機の時に後ろにいてどうする。とことん働け」と、震災復興における官僚の役割の重要性を主張している。

・  被災地への支援物資の物流がうまくいっていないなど、菅政権の対応が成果を上げていないように見えるのは、各省庁が横断的に連絡を取り、地方自治体とも連携できていないから。

・  危機の際に効果的な対策を打ち出し、優先順位を即座に決めて工程表を作るなどの仕事は官僚が最も得意なもの。首相は震災発生後すぐに、事務次官会議を招集するべきだった。

・  迅速な復旧・復興をするには規制改革について多くの課題がある。政策や規制に一番詳しいのは官僚。彼らを見方にするのが一番の早道。政治家が責任を取る姿勢を示し、彼らの力を最大限に引き出す必要がある。

民主党政権は09年の衆院選から「脱官僚」「政治主導」を掲げ、事務次官会議の廃止などを行ってきた。天下りや予算の無駄遣いなど、官僚がこれまで批判にさらされたことに理由がなかったわけではないが、官僚機能の安直な否定が裏目に出ていることは間違いない。当の政権そのものに危機管理能力がなければ、政治主導は虚しいことが明らかになったわけだ。

また、民主党政権はこれまで地方分権、道州制を声高に主張してきたが、今回の福島原発事故を見れば分かるように、国家的危機に際して政府の役割は極めて重要だ。福島県知事をはじめ、現地では政府による避難指示や原発に関する情報開示の不明瞭さに不満を募らせていることも、地方で対応できる案件には限界があることを如実に示している。地方分権はむしろ政府の責任放棄につながる恐れがあり、国家の危機管理を一層脆くするだろう。

子ども手当などバラマキ政策の一方で復興財源が不足するなど、民主党政権の政策はどれもこれも裏目に出るものばかりである。日本は今、国家のあり方について根本的に考え直す時期が来ている。(雅)

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