政府は16日、関西電力大飯原子力発電所3,4号機の再稼働を決定した。関西電力は同日中に運転再開に着手し、7月下旬にはフル稼働する見通しである。

しかし、フル稼働するのが7月下旬であれば、関西電力管内で7月中に電力不足に陥る危険は依然としてある。SMBC日興証券エコノミストの宮前耕也氏の試算によれば、仮に一カ月間、関電管内で計画停電が実施された場合、実質GDPを年間1兆円押し下げるリスクがあるという。さらには現時点で、原発稼働停止に伴う石油や天然ガスの輸入増で、実質GDPが年間2.8兆円押し下げられる試算となっている。計画停電を避けるという意味では、大飯原発の稼働再開は、明らかに遅すぎた。

原子力安全・保安院は、北海道電力泊原発(北海道)、九州電力川内原発(鹿児島)、北陸電力志賀原発(石川)のストレステスト結果の審査を8月末までに終える方針を固めた。9月までに発足の原子力規制委員会の判断の上で、再稼働される。原子力安全・保安院の審査が終わっている四国電力伊方原発(愛媛)と合わせて、4原発が再稼働する可能性が出てきた。しかし、再稼働は早くても今冬以降の見通しであり、あまりにも遅すぎる判断である。

再稼働を巡って態度がぶれ続けた政府に対し、福井県の西川知事が大飯原発稼働の条件の一つとして挙げたのが「ぶれることなく原発の重要性を国民に示す姿勢」であった。野田首相は8日、「原発を止めたままでは日本社会は立ちゆかない」と発言し、事態は打開された。しかしその後、枝野経済産業相が「中長期的に原発依存から脱却する方針は変わらない」と発言し、政府の迷走は続いたままである。

本欄でも繰り返し述べてきたが、原発の再稼働は当然である。そもそも、事故が起きたわけでもない福島以外の原発を全国で止めたことが間違いである。原発の稼働停止によって電力不足を起こし、経済活動を停滞させるならば、数多くの企業の経営を苦しめることにより、結果、国民の生活を締め上げることになる。民主党政権の判断の遅さは致命的だ。電力不足が危ぶまれる夏は、もう、すぐそこに迫っている。(晴)

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