大阪大学の森正樹教授らのグループが、人のさまざまな組織の細胞に変化する可能性を持ったiPS細胞(新型万能細胞)と同じ能力のある細胞を、新たな方法で作成することに成功したと、27日付で各紙が報じている。

従来のiPS細胞は、3~4種類の遺伝子を組み込んだ運び役のウイルスを、皮膚などの細胞に感染させる方法で作成されていた。それに対し、今回の方法は、皮膚などの細胞に「マイクロRNA」という遺伝物質の断片を3種類ふりかけるだけだという。「mi‐iPS(ミップス)」細胞と名付けられたこの細胞は大量生産が可能なため、臨床応用に向けての大きな一歩だと期待されている。

06年に京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞を世界で初めて開発してから、日本でも再生医療研究が大きな注目を集めるようになった。豊富な資金力を持つ米国の研究グループに追い抜かれるという危機感があるなか、本誌2010年10月号で紹介した慶応大学の福田恵一教授が開発した「TiPS」細胞や、今回の「mi‐iPS」細胞など、日本の再生医療研究も大きく健闘している。

4月には日本で初めて、15歳未満で脳死判定を受けた患者を提供者とする臓器移植手術が行われた。本誌では度々、脳死は人の死ではなく、脳死臓器移植は推進すべきではないと訴えているが、こうした再生医療の進歩によって、難病や重病を克服する日が来ることを願いたい。(雅)

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