震災の復興財源として増税論が中々やまない。

9日付毎日新聞では、菅直人首相のブレーンとして知られる経済学者の小野義康氏(内閣府経済社会総合研究所所長)の「復興支援税」構想が紹介されている。その主張は次のようなものだ。

  • 震災復興で必要な国費は総額15兆円と見込まれる。消費税なら1~1.5%5年間引き上げれば確保できる。
  • 増税は景気を悪くするという批判は間違い。
  • 税金を被災者の給付や復興事業に回せば、モノをどんどん買うので、所得として納税者に戻ってくる。15兆円の財政支出で200万人の雇用が生まれ、景気はむしろ良くなる。

同様の主張は7日付産経新聞でも伊藤元重氏が展開している。消費税を増税しても、すべて復興資金に回せば、インフラ再建などすべて需要となるはずだから問題ないという主張だ。

しかし、こうした「先に」税金でお金を取っても「後から」需要になるので損にはならないという発想は危険だ。貧血状態にある人から強引に血を採っても、後で栄養のあるものを食わせるから大丈夫だと言っている理屈に近い。血を採った瞬間に死んでしまったら、「後で」という理屈は通らないのだ。

そうではなく、栄養を十分に採って体力を万全にしてから(景気が回復してから)、血を採る(税金を取る)というのが、正しい順番だ。

計算上、結果的に辻褄が合えばいいという発想は、机上の空論であり、生きた経済を知らない戯言と言わざるを得ない。

また、この「増税しても景気はよくなる」という理屈を一度認めてしまったら、いくらでも増税し放題になるという危険性も改めて認識しておきたいところだ。(村)

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