米の格付け会社「スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)」が27日、日本の長期国債格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。

「格付け見通しの弱含み」とは、格付け自体は「AA-」のままで、「今後6カ月から2年間に、格付けを引き下げる可能性が3分の1以上ある」ことを示したもの。震災の復旧・復興に多額の財政支出が見込まれ、財政悪化が進む懸念があるためという。

S&Pは今年1月に日本の国債を「AA」から「AA-」に一段階格下げしたばかりだが、率直に言えば余計なお世話だ。

たとえば、リーマン・ショック以前、米の格付け会社が、住宅ローンを担保にした証券に最高ランクの「AAA」を格付けしていたことは有名。その後に投資家たちが起こした訴訟でも、格付け会社は「格付けは言論の一種」と抗弁し、訴訟に負けた例は皆無という。(参考:2011年2月4日付産経新聞)

以前、弊誌が取材したある経済学者は「一般的に格付け機関は、格付けされる発行会社から手数料をとって運営している。アメリカでは『高い金を払えば、高い格付けがもらえる』程度にしか思っていない」と話していた。

安心なのは、S&Pの発表を受けた後も、東京市場で為替相場も長期金利も小幅な動きだったこと。日本国債を買っているのは95%が国内の銀行や生命保険会社などの国内投資家で、「国内勢が買い支えている限りは、市場が急変することはないというのが一般的な見方だ」(28日付朝日新聞)。

菅政権が震災復興や経済活性化の具体的なビジョンを描けないのは事実だし、格付けするのは企業の勝手かもしれない。だが、言いっぱなしで責任をとらないような格付けは「風評被害」を招くだけだ。そうした格付け会社にこそ「自粛」してもらうべきだろう。(格)

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