日本人が2人というのは多いか少ないか? 米TIME誌5月2日号は恒例の「世界で最も影響力ある100人」を特集している。今回、日本人で選ばれたのは時節柄、いずれも大震災の被災地関係者だ。

一人は福島県南相馬市の桜井勝延市長(55歳)。同市長は東日本大震災から約2週間後の3月24日、約11分間のビデオを収録。震災で被災した同市の窮状と、政府や東京電力からの情報不足などを、東北人らしい朴訥な口調で切々と訴え、全世界に助けを求めた。ビデオはYouTubeにアップされて英語字幕も付され、世界からアクセスを集めている( http://www.youtube.com/watch?v=70ZHQ--cK40 4月26日13時現在約40万回再生)。

もう一人は宮城県南三陸町の菅野武医師(31歳)。同医師は震災発生と同時に町の医療活動に奮闘し、町民がヘリで救出されるときは最後の一人が乗るまで自分もヘリに乗ろうとはしなかった。震災から3日後にやっと妻の元に戻ると、妻は数時間前に第二子を出産したばかりだったという。

他の98人はアメリカ人が多いが、国家元首としてはオバマ大統領(米)、キャメロン首相(英)、サルコジ大統領(仏)、メルケル首相(独)、ルセフ大統領(ブラジル)、ネタニヤフ首相(イスラエル)の6人が選ばれている。中国の習近平国家副主席や北朝鮮の金正恩氏ほか、元首ではない国家指導者も何名か選ばれている。

日本の政治家が誰一人として選ばれなかったのは、桜井市長を紹介した同記事の文章と関係がありそうだ。「彼(=桜井市長)の嘆願は全世界に広まっている。これに接した人の多くは、日本は効率性(efficiency)であれほど名高い国なのに、なぜ無力な市民たちの期待を裏切っているのかと疑問を発している」

その疑問に日本人として恥を忍んで答えれば、「日本の効率性は民間のビジネスの話であって、今の民主党政権のやり方は効率性には程遠い」ということだ。TIMEが日本の政治家でなく桜井市長を選んだのは、無能な政治家たちのネガとして皮肉を込めてのことかもしれない。同記事のタイトルはこうだ。「桜井勝延 日本の恥を広めた市長(The mayor who shamed Japan)」。(司)

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