現代社会は、メディアの情報発信が“事実”をかたちづくる面がきわめて大きい。全地球的に最も強力な発信をしているメディアは米CNNや英BBCの24時間テレビニュースだが、両テレビが今の日本をどう報道しているかについて、国際教養大学理事長で学長の中嶋嶺雄氏が22日付産経新聞「正論」欄に書いている。

同大学ではCNNもBBCも常時放映されており、その報道ぶりを見ると、原発事故によって日本はもはや全土が「危険な国」「チェルノブイリ化した国」であるかのような印象を与えるものが目立つという。一方、日本の対外広報態勢は脆弱で、英語による国外への発信力が不足している。それもあってか、同学に在学していた留学生161人の8割以上が震災後に帰国してしまったとのこと。

同氏は述べている。「CNNやBBCに引き換え、わが国のテレビや新聞はどうか。特にテレビは大切な放送時間をバラエティーやお笑いに費やしすぎてはいないか」。「官房長官や東京電力などの記者会見の横に英語同時通訳者がつき、テレビを通じて外国人にも内容がわかるようにするだけでも、日本の対外発信力は強まるはずだ」

日本の対外発信力についての課題は二つある。一つは、国民の英語力の向上。例えば外国人記者から街頭でインタビューのマイクを向けられても、普通に英語で受け答えできる日本人が増えれば、もっと一般日本人の声も海外に伝わるはずだ。

だが、語学力はあくまで手段に過ぎない。肝心なのは、日本が世界に向けて発信したい自分たちの考えやメッセージをしっかり持つことだ。単に自国の状況を知らせるだけでなく、世界有数の経済大国として、アラブ革命や中国の人権侵害問題などについても、何が正義かについての意見を、政治家や報道機関が積極的に対外発信すべきである。グローバル時代にいつまでも内向きの意識では、日本は国際社会で影が薄くなるばかりだ。(司)

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