いまだ収束しない福島第一原発事故を背景に、各国では反原発の動きが出ると同時に事故を教訓に、原発の技術的な進歩を目指すべきとの声も根強い。

同原発周辺では28日にも高い放射線量が検出され、日本の他地域では新規原発の建設中断が相次いでいる。また27日付の米ニューヨーク・タイムズ紙は、国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長が、同事故について「終結には依然程遠い」と発言したことを報じている。

そうした中、反原発を国是とするオーストリアは22日、欧州全体の脱原発化をめざす行動計画を発表。メルケル首相が原発を推進してきたドイツでは26日、反原発デモに同国史上最大規模の25万人が参加した。米仏露も安全性強化に追われ、米国では原子力規制委員会(NRC)が全原発の安全性評価を始めている。

各国メディアでも事故の深刻さを強調する報道は多いが、一方で原発との共存を目指そうとする論調も根強く存在する。21日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙は、経済学者ハイエクが学問におけるデータ入手の限界を指摘したことを引き合いに、予想外の事故に際して誤りばかり強調するのではなく、新しい技術と教訓を学ぶべきことを論じている。24日付の米ニューヨーク・タイムズ紙も「現存の原発をより安全にするとともに、より安全な次世代原発の開発を目指すべき」との専門家の意見を掲載し、22日付の英紙ガーディアンは老朽化した原発を大地震と巨大津波が襲ったにも関わらず、誰一人到死量の放射線を浴びていない同事故を見て、原発推進派に転じた環境コラムニストの声を報じている。

生命を危険に晒すような事故が避けられるべきことは明らかだが、失敗から学ぶことで科学も社会も発展してきたのは事実だ。特に原子力は兵器となれば人類を滅亡させる力すら持つもので、その進化と危険は常に隣り合わせだと言える。しかし発展を止める方を選ぶよりも、失敗から学んで先を目指すことこそが、未来へと繋がる選択ではないだろうか。(由)

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