東日本大震災に伴う原発事故を受け、世界的に原子力エネルギーの見直し論が出ている。

ドイツ政府は既存の原発の稼動年数を平均12年間延長する方針だったが、その方針を一時凍結。中国も13基の原発を稼動させ、新規原発計画が27基あるが、温家宝首相は新規計画を一時凍結した。

ただ、原子力利用が急激に縮小していくかというと、そこまでの勢いはない。アメリカは電力需要の20%を104基の原発に頼り、オバマ政権は新規の原発建設を進めてきた。今回の事故で原発建設計画を延期する動きが出ているが、大幅な見直しまではない。国内電力の80%前後を原子力に依存するフランスは「脱原発は論外」(サルコジ大統領)と揺るがない。インド政府も計画の遅れは出るが、原発政策は大きく変えない方針だ。

電力需要の30%を原子力に頼る日本の事情も同様だ。簡単に「脱原子力」ができるわけではない。その点については、ジャーナリストの池上彰氏が今週の週刊文春で、分かり易く説明をしている。

・  現在、東電の発電能力はピークの80%しかない。これでは夏場の電力は足りない。

・  風力、太陽光などでは効率が悪かったり天気に左右されたりして賄えない。水力発電用のダムはこれ以上つくれる場所は少ない。火力発電はCO2の問題がある。

・  原発をこれ以上つくらないのであれば、電力に依存した今の暮らしを変えるしかない。

ただ池上氏が「清貧な暮らし」がいいと言っている点は賛同できない。それは単なる昔返りでしかない。日本経済をさらに発展させていくためにも、原子力エネルギー政策を再構築し、もっと安全性を高めていかなければならない。(織)

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