23日付日本経済新聞の文化面に、宗教学者で浄土真宗本願寺派の僧籍を持つ山折哲雄氏の談話が出ている。岩手県内に住む同氏の親戚で、まだ消息がつかめていない人もいるという。今回の震災について同氏は言う。

「受け入れがたい事実を抱えると、人は立ちすくんでしまい、耐えるのもつらくなる。宗教はこれに対処する糸口を持ちうる。今回の大地震で、改めて多くの人が宗教の必要性を感じているのではないか」

「(引用者注:末法と言われる世において親鸞の浄土真宗は)戒律を破らずには暮らしていけない人々でさえ極楽往生できる(救済される)と説いて民衆をひき付けた」

「日本列島に生きる人々は、こうした自然の猛威や大量死と背中合わせに暮らしてきた。永遠なものはなく、形あるものは滅びるという死生観や無常観も培われた。(中略)ところが戦後日本は無常という概念にふたをするように、死と正面から向き合うことを避けてきた」

僧侶でもある山折氏は、被災による受け入れがたい事実に耐えるよすがとして仏教の「無常観」を強調している。確かに「諸行無常」は釈尊の教えの中心の一つである。だが、「すべては、はかない。いつかは誰もが死ぬ」という無常観だけでは人間は厭世的になり、生きる気力や希望を失ってしまいかねない。その意味で無常は、いまだ真理の半面に過ぎない。

釈尊の真意は、無常を通して「この世は修行のための仮の世であり、あの世(霊界)こそ人間の魂が住む本来の世界である」という革命的な真理を説き、人々に人生の意味や本当の安らぎを教えることだった。唯物論的に捻じ曲げられた明治期以降の仏教解釈では、生と死をめぐる実存的疑問には答えきれない。今回の震災を期に切実に求められている救済の道とは、釈尊も説いた、この世とあの世を貫く真理なのである。(司)

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