フォーリン・アフェアーズ2月号(日本語版)においてヒラリー・クリントン米国務長官が、「軍事偏重からシビリアン・パワーへ」という特集の一つとして、Leading Through Civilian Power──Redefining American Diplomacy and Development(シビリアンパワーで米外交を刷新する)と題して論考を寄せている。Redefiningという表現から、外交を見直したいのだという意思が伝わってくる。

長い論考であるので、一部要約するにとどめるが、テロ等の難しい問題は非国家的ファクターの影響力が大きいこと、そうであるならば米国の外交官は、これまで以上に非国家的要素を考慮して、相手国の外交官だけでなく、地方部族の長老とも対話するようになる。よって、軍事力のみならず、米国際開発庁(USAID)などの開発と外交を結びつけ、シビリアン・パワーと適切なバランスをとりながら、国益と価値を促進すべきだと論じている。

だが米国の軍事偏重の色彩をシビリアン・パワーというソフトタッチな言い方によって、redefine(再定義)するのは、国家が果たす役割を軽んじる傾向にならないだろうか。

一方で、ベーカー元米国務長官は、エジプトの情勢を分析するなかで、ムバラク氏が中東の平和と安定に果たした役割を高く評価して、その功績を評価するのを忘れない。クウェートを解放した多国籍軍にアラブ諸国の軍隊、エジプトとシリアの部隊も参加するように促したし、湾岸戦争後のマドリッド中東和平会議開催をめぐる会議を成功させる上で大きな役割を果たした、というのだ。(Egypt a Textbook Foreign Policy Dilemma /Foreign Affairs)。

彼は、米国の民主主義や人権等の「原則と価値」のみならず、「国益」をも重視することが外交の原則で、エジプトはこの二つが衝突する教科書的事例だという。

イスラエルの問題も、結局は、エジプトとイスラエルという国家間同士の平和条約が維持されるかどうかが焦点だ。

非国家的ファクターへの重視によって、軍産複合体によって左右されてきた米国外交を刷新するというのは耳触りが大変いいが、昨日の法話で大川総裁が述べていたように、地域の不安定化、世界を混沌へと導くことになる面があるのを忘れてはならいだろう。(HC)

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