「ビンラディン後の世界」(コーエン)

2011.05.04

インターナショナル・ヘラルド・トリビューンのコラムニストの一人ロジャー・コーエンが、3日付同紙で「ビンラディン後の世界」と題するコラムを書いている。米国ジャーナリズムの一つの見方として概要を紹介する。

・ビンラディンが(アラブ革命による)古い中東社会の終わりと同時期に死んだことは、偶然とはいえ意味がある。アラブ世界が怒りと報復を外側に向けていた政治状況から、責任と代議制に基づく新しい政治体制という内政中心の政治状況に移行するのと時期を同じくして、彼は死んだことになる。

・ビンラディンが描いて見せたカリフ制社会の復興は、市民権などを奪われて絶望していたムスリムたちにとっての慰めだった。だが(アラブの民主化によって)仕事と選挙権と将来の見通しを手に入れた若者たちは、もはやパラダイスの処女たち(=イスラムの殉教者がおもむく天国のイメージ)を必要としない。

・とはいえアルカイダはまだ死んでおらず、戦いは続いている。ビンラディン本人同様、彼が始めた運動そのものを死に追いやるにはどうすればいいか? それにはカダフィの早期追放、アラブ革命に継続的な政治的支持と財政支援を与えて革命を正しく成就させること、アフガン戦争を可能な限り早く終結させること、そして、中東におけるアメリカの最も緊密な同盟国であるイスラエルに対し、中東が変わった以上、イスラエルも変わる必要があると理解させることである。

・オバマ大統領は運のいい人物だ。今回の幸運により2012年の大統領選は、オバマの続投で決まるだろう。

米国としてはビンラディン殺害を大きな節目と捉え、一気にアルカイダの掃討を狙っているようだ。だが本誌が以前から指摘している通り、ことの本質は単にイスラム・テロ集団対アメリカの戦いではなく、キリスト教文明とイスラム教文明という二つの一神教の「宗教文明の衝突」にある。根源の神の違いに基づく対立が解決されない限り、両文明の衝突が終息することはないだろう。政治的努力と合わせて、キリスト教の「父なる神」とコーランのアッラーの本質が同一の地球神であるという宗教的真理を広める努力が不可欠である。(司)

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