米紙が中国からサイバー攻撃を受けていた問題で、今度はウォールストリート・ジャーナル紙が中国側からハッキングを受けていたことを明らかにした。同紙を発行するダウ・ジョーンズ社は声明で、「ネットワークへの侵入は、中国に関する報道の監視が目的」と指摘している。すでに被害を明らかにしているニューヨーク・タイムズ紙のほかに、経済・金融情報を扱うブルームバーグ通信も標的になっていたと見られる。

中国国内の厳しいインターネット検閲は有名だが、国境を超えて、世界的に報道の自由が脅かされないか懸念されるところだ。米外交問題評議会のアダム・シーガル上級研究員は、国際問題専門誌フォーリン・ポリシー(電子版)に「ハッキング人民共和国」と題する論文を寄稿し、「国際的な政治の議論を操作したいという(中国の)願望」が明らかになったと論じている。

中国の姿勢の背景には、共産党幹部の腐敗などを暴く海外報道が、国内で頻発する市民の暴動を助長しかねないという恐怖心が見え隠れする。その一方で、中国が世界の中心だという中華思想に基づくものだと指摘する専門家もいる。1月13日付で、核拡散問題などを扱うブログ「ニュー・パラダイムス・フォーラム」に寄稿した、米ハドソン研究所のクリストファー・フォード上級研究員だ。

彼は昨年11月、中国のシンクタンクや軍関係者と交流する北京でのフォーラムに参加したが、そこでの中国側との議論は平行線だったという。フォード氏は、南シナ海での領土問題や朝鮮戦争、日本の教科書問題など、歴史やニュースをめぐる事実認識に極めて大きな隔たりがあり、「人民解放軍側の参加者の目的は、未来志向の『相互理解』の議論を始める前に、彼らの考える歴史的事実を全員に受け入れさせることのようだった」と述べている。

日本の教科書問題などは明らかな内政干渉だが、フォード氏によれば、出席した軍高官はこう正当化した。「他国の内政問題であっても、これらの問題が中国に影響する以上、要求を突き付けても内政干渉にはあたらない」。フォード氏は、他国での報道に過敏に反応する中国側の姿勢を「情報時代版の中華思想」と呼び、「ここに、(本誌注・物理的ではなく)思想的な帝国主義が見てとれる。それは、中国に関する各国の議論をコントロールすることこそ、中国の戦略目標であることを物語っている」と結論付けている。

信教の自由、表現の自由など、人間としての基本的な自由を認めない軍事独裁国家・中国の体制をこのままにしておけば、近いうちに世界の自由が脅かされることになる。中国共産党の独裁体制を解体することこそ、各国が共有すべき戦略的目標であり、正義である。

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