公明党は、中国共産党と古くから友好関係にある。同党の山口那津男代表は22日からの訪中に先立ち、21日放送の香港のフェニックステレビで、日本固有の領土である尖閣諸島の領有権を中国が主張していることに関して、「容易に解決できないとすれば、将来の知恵に任せることは一つの賢明な判断だ」と述べた。同日夜にも仙台市内で記者団に「将来世代に解決を委ねるのは当面の不測の事態を回避する方法だ」と強調した。いわゆる「棚上げ論」だが、これは日本政府の立場とは異なる発言だ。

尖閣問題の棚上げ論は、中国側が「1972年の日中国交正常化の際、双方がこの問題に触れないことを約束した」として持ち出したものであり、日本政府は「領土問題が存在しない以上、棚上げという合意もない」との立場をとり続けている。山口代表の発言は、この政府見解に反する、中国の主張に沿った発言であり、きわめて問題と言わねばならない。

山口代表は今回の訪中で習近平総書記との会談に向けて調整中だが、2010年12月に訪中した際には習氏(当時は副主席)から「中日友好の拡大に公明党が重要な役割を果たしてきた。他に取って代わることのない役割に期待している」と求められた。

その後12年4月、当時の石原慎太郎都知事が尖閣購入計画を明らかにすると、その直後に来日した唐家セン・中日友好協会会長は山口代表らと会見し、「日本の中である人が中日関係を悪化させることが目的のような発言をしている。両国で安定的な関係を築き、こうした問題も未然に解決すべきだ」と求めた。それに対して山口代表は「友好を掻き乱す動きに惑わされず、両国関係をより発展させたい。公明党はぶれずに日中友好をこれからも貫く」と表明したという(2012年4月26日付公明新聞)。

さらには2012年8月、習氏に近い中国人民解放軍最高幹部が、訪中した創価学会幹部と非公式に会談した際、「池田大作・創価学会名誉会長の力で、両国間で尖閣問題について協議できるような環境整備ができないだろうか」と持ちかけていたという報道もある。山口代表の中国寄り発言は、こうした中国側(習氏?)の意向を代弁していると見ることもできる。

山口代表は22日、北京へ出発する前に都内で記者団に、「尖閣諸島はわが国固有の領土で、領土問題は存在しない。それは政府・与党共通した認識だ」と述べ、中国寄りの発言を軌道修正した。また、中国の要人に尖閣問題の棚上げを伝えるかを問われると、「話題にするかどうかは、今後十分考えたい」と述べた(時事通信)。だが、上記の経緯からすれば、山口氏が習氏や他の要人に対し「尖閣は日本固有の領土である」と正当な主張ができるか不安と言わざるを得ない。間違っても政府与党の一員として、訪中して尖閣を「係争地」と述べた鳩山由紀夫元首相のような、中国の覇権主義を利する愚を犯してはならない。(司)

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2013年1月19日付本欄 国賊・鳩山政権が続けば「日本占領」は現実化した。

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