毎年1月の開催が慣例の東南アジア諸国連合(ASEAN)非公式外相会議が、今年は中止になった。複数のASEAN関係筋が11日、明らかにした。12日付読売新聞が報じている。

ASEANでは議長国が交代する毎年1月に、その年の重要議題などを協議するため、非公式外相会議を開催することが近年では慣例になっていた。しかし議長国のブルネイは昨年12月、「重要な議題がない」として会議の中止を決定したが、中止の真相は、南シナ海の対中国・領有権問題をめぐるASEAN内の亀裂をこれ以上激化させないためだと言われている。

ここで、ASEANと中国の関係を確認しておこう。

ASEANは東西冷戦中の1967年8月、反共政治同盟として発足。原加盟国のタイ・インドネシア・シンガポール・フィリピン・マレーシアはいずれも反共の立場で、西側の民主主義・自由主義経済国と親和性があった。タイとフィリピンは反共軍事同盟である東南アジア条約機構(SEATO)にも加盟しており、ベトナム戦争ではアメリカ・南ベトナムを支援。当時の中国は文化大革命の最中で、毛沢東を中心に社会主義革命の輸出を熱心に訴えていたため、ASEANの中国に対する警戒感は強かった。

80年代以降、シンガポールやタイなどで高度経済成長が実現、中国でも、トウ小平が改革・開放路線を導入して経済成長が始まった。中国の海洋進出が始まったのもちょうどこの時期だ。その後95年には、共産党の一党独裁が続くベトナムがASEANに加盟したことで、ASEANは反共政治同盟から東南アジアの地域共同体へと変質。中国共産党と関わりのある国がASEANに加盟したことで、ASEANがまとまって中国と対峙する方針は取りにくくなった。

例えば、南シナ海への中国の海洋進出問題では、当事国のフィリピンとベトナムはASEANを中心に国際社会への関与を引き出そうとしたが、70年代の共産ポル・ポト政権のために親中国になったカンボジアは、南シナ海問題について「当事国間の問題だ」と主張。ASEAN諸国間での亀裂が生じている。

12月に誕生した安倍内閣は、東南アジアとの経済・安全保障での連携を強調している。安倍首相は初外遊先を東南アジアに決定、16日からベトナム・タイ・インドネシアのASEAN加盟3カ国を訪問する。麻生副総理・岸田外相もASEAN加盟国を中心に東南アジアを訪問している。

東南アジアと日本は、中国の海洋進出を警戒する点で利害が一致する。ASEANが本格的に自由と繁栄を享受したいなら、組むべき相手は中国より日本であることは明らかだ。ASEAN諸国は設立の原点に立ち返り、国民の自由を抑圧して領土拡張を図る共産主義国と対峙し、日本と連携を強めてアジアの自由と繁栄を推し進めるべきである。(飯)

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