外遊中の岸田文雄外相は9日、フィリピンの首都マニラで、デルロサリオ比外相と会談。東シナ海と南シナ海で両国が抱える中国との領土問題を背景に、海上警備での協力関係の強化で合意した。また、日本側からのインフラ整備や政府開発援助(ODA)による協力強化を確認した。

デルロサリオ外相は、日本が衆院選の期間中だった昨年12月、「日本が再軍備すれば、歓迎する」と述べ、今回の会談でも「航海の自由に悪い影響が及ぶことも想定して、対処できるようにする必要がある」と話した。日本が、アメリカの動きを補完しつつ、イニシアティブを発揮すれば、東アジアの平和維持に役立つというメッセージだろう。

安倍政権は就任以来、東南アジア外交に力を入れている。このほど麻生太郎副総理がミャンマーを訪問したが、岸田外相もフィリピンのほかにシンガポール、ブルネイ、オーストラリアを歴訪の予定だ。16日からは、安倍晋三首相自身が第2次政権での初外遊で、ベトナム、タイ、インドネシアを回る。

安倍政権がこの地域との協力関係を強化するのは、中国の軍事的な脅威に対抗すべく、防衛協力のネットワークをつくることが重要だからだ。安倍首相は年末にアメリカの論説投稿サイトに寄せた論文で、南シナ海が「北京の湖」になりつつあり、このままでは人民解放軍が核ミサイルを積んだ潜水艦を、海域に配備する事態になりかねないと論じた。

その上で安倍首相は、オーストラリア、インド、日本、米ハワイ州が、西太平洋・インド洋での航海の自由を守る「ダイヤモンド」を築くべきだと構想している。事実上の、中国「封じ込め」作戦だ。猛烈な軍拡を続け、周辺国に領土問題で脅しをかける中国に対して、防衛のネットワークを築いて東アジアの平和を守ろうとする動きである。

フィリピンでは1990年代、米空軍・米海軍基地への反対運動が盛り上がり、追い出した経緯がある。だが近年、中国の南シナ海への進出を受け、米軍はフィリピンに回帰する動きを見せている。

安倍首相は東南アジア歴訪の後、2月に訪米する方向で調整を進めており、アメリカも「アジア回帰」戦略を打ち出している。日米が中心軸となって周辺国を巻き込み、中国の軍拡に対処する流れを確実に強めていくべきだ。

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