27日に開幕したロンドン五輪では、初めて、国際オリンピック委員会(IOC)の加盟国204カ国すべてから女子選手が出場する。開会式では、初めて女性が出場するイスラム教国のカタールとブルネイの女子選手の旗手姿が注目された他、サウジアラビアからも女子選手が参加した。

これまで、カタール、ブルネイ、サウジアラビアは女子のオリンピック代表を認めてこなかった。イスラム教では女性が公の場で顔や肌を出すことを禁じているため、オリンピック参加が難しかったのである。IOCの働きかけにより今回の出場が実現した。

また、27日付読売新聞は、オリンピック期間中のイスラム教徒の選手の断食を取り上げている。イスラム教では、ラマダン月には日の出から日没まで飲食を断つ。イスラム教徒にとって断食とは神を意識し、信仰を深める行為である。さらに、空腹感を感じることで、食べ物のありがたみや貧しい人への施しの思いを持つ。この時期のロンドンの日照時間は長いため、16~17時間ほど飲食ができない。スポーツ選手が日中の水分補給すらできないとなると、良い成績を出すのは極めて難しい。

今回のオリンピックに参加するイスラム教徒は3000人以上いる。断食を実行する選手も少数いるが、断食の延期を決める選手が多いという。エジプトは、オリンピック参加選手は断食を免れるという見解を出し、アラブ首長国連邦(UAE)では、断食を競技後に延ばすことを宗教指導者が認めている。

UAEから参加する柔道のへミード・ドリエ選手は、大会期間中は断食しないと決め、こう語っている。「私が何をしようと、断食をしようとしまいと、アッラーの神は私とともにある」「一番大切なのは神を信じてベストを尽くし、勝っても負けても神に感謝することだ」(24日付CNN)

イスラム教にも、女性のスポーツ参加や戒律の柔軟な解釈など、「自由」が少しずつ浸透してきているようだ。慣習や戒律によって硬直化した面が大きいイスラム教にこうしたイノベーションが始まることは、イスラムが奉じている平等や喜捨、慈悲の精神に決して矛盾するものではないはずだ。(晴)

【参考書籍】

幸福の科学出版ホームページ 『世界紛争の真実 ミカエルvs.ムハンマド』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=95

【関連記事】

2012年8月号記事 特集・現代に救世主はいるか

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4491