東京都の尖閣諸島購入計画に関して丹羽宇一郎駐中国大使のコメントが7日、英フィナンシャル・タイムズ誌に掲載された。丹羽氏は「もし石原氏の計画が実行に移されれば、日中関係に重大な危機が訪れる」「今までの(日中関係回復の)努力を無にすることはできない」と批判する。同氏は主な懸念材料として対中ビジネスへの悪影響を挙げる。

丹羽氏は前管政権時に選ばれた財界出身の大使であり、その視点は経済的利益に偏っているようである。しかし、外交では長期的な国益を守るために、経済利益を越えた鉄則を立てる必要がある。

尖閣諸島が日本の固有の領土であるならば、日本人による「日本の土地」の購入にあたって外国の意見を憂慮する必要はまったくない。その姿勢のブレが実はこの領土問題を大きくしてしまうのだ。

実際に、2010年の尖閣諸島沖漁船衝突事件では、「国内法に基づいて裁く」という原則を曲げて中国漁船船長を釈放してしまった上に、レアアース禁輸措置や首脳会談をしてもらえるかなどといった別の交渉に持っていかれてしまった。さらには、「押せば退く」国という印象を中国に、そして国際社会に持たれてしまった。次に似たような事態が発生した際には、同じ失敗はもう許されない。

大川隆法・幸福の科学グループ創始者兼総裁は『平和への決断』において次のように述べている。

「今、日本にとって大事なのは、『外交の鉄則』をきちんと立てることです。そして、『今後、日本の外交は、このような鉄則の下に行う』ということを、あらかじめ、国内および外国に対し、明確に示しておくことが大事なのです。それをせず、場当たり的に『何とか片付けよう』とか、『話し合いで済ませよう』とか、そのようなことをしていると、しだいに、おかしな交渉に持っていかれ、何をやっているのかが分からなくなるのです。」

藤村修官房長官が7日午後の記者会見において、このコメントを受けて外務省が丹羽氏に注意をしたことを明らかにした。政府は今一度、尖閣諸島に関する外交の鉄則、覚悟を固めておく必要がある。その一貫として、中国大使が国益を損なう考えを持っているならば、大使としてふさわしい人物ではなく、更迭に値する。

同じ失敗を繰り返し尖閣諸島問題が後戻りできないところにまで行くか、2010年の汚名を返上するのか、一連の購入計画をめぐる政府の対応に注目したい。(光)

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