本誌4月号でインタビューに応じた、イラン生まれの米国の気鋭の宗教学者レザー・アスラン氏が、11日付朝日新聞にイスラムの民主主義に関する談話を載せている。おもなポイントは、

  • 欧米では「民主主義とイスラムは両立しないのではないか」と考えられてきたが、そこにはそもそも、イスラムに対する知識のなさがある。
  • 世界には、ひとつとして同じ民主主義はないことに気づくべきだ。たとえば米国の民主主義はキリスト教的価値観に基礎を置いている。エジプトで生まれる民主主義は、イスラム教の考え方や文化に基づくものになるだろう。「自分たちが望ましいと考える民主主義と違うから、あれは本当の民主主義ではない」と言うのはおかしい。
  • イスラム主義の集団が政治参加したら、タリバーンやイランのようなイスラム教和国になるしかないわけでもない。トルコのように、宗教勢力を政治プロセスに取り込めば穏健化する例もある。中東の民主主義の発展は長いプロセスになるが、周囲は辛抱強くそれを見守り大事に育てていく必要がある。

「世界には、ひとつとして同じ民主主義はない」という指摘は興味深い。民主主義にもさまざまなレベルや差があり、同様に宗教にもさまざまなレベルや違いがあるが、その上で普遍的な宗教と民主主義の共通点を一つ挙げるなら、「人間一人ひとりの価値を認める」点だろう。キリスト教や仏教は人間を「神の被造物」や「仏子(ぶっし=仏の子)」として捉え、特に仏教は、個人の命の尊さ、善性、無限の可能性を積極的に認める。その意味で宗教こそ、民主主義が奉ずる「個人の尊厳」に論理的根拠を与えるものなのだ(逆に唯物論国家は平気で自国民を大量虐殺してきた)。

イスラム教には「アッラーのみが偉大であり、そのもとで人間は平等に小さな存在に過ぎない」という思想があるが、今後イスラム国家で民主主義が発達するためには、そこに何らかの形で「個人の尊さ」の思想を取り入れる必要があるのではないか。(司)

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