4月にチベットで僧侶300人以上がトラックで強制連行され、それを阻止しようとした住民が殺されるなどした中国当局の宗教・人権弾圧の様子を、中国情報専門紙の「週刊チャイニーズドラゴン5月3・10日合併号」が報じている。

記事によると4月21日、四川省アバ・チベット族チャン族自治州のアバ県で、治安部隊がチベット仏教寺院の僧侶300人以上を拘束し、トラックで強制連行。行き先は不明だが、どこかの施設で僧侶らに「愛国主義」の思想教育をする可能性が高いという。連行の際に僧侶を守ろうとした住民2人が死亡した。

これより少し前の12日にも、チベット仏教寺院で僧侶連行未遂事件が発生。このときは数百人の住民が僧侶の連行を阻止したが、2人が死亡、多数の負傷者が出た。チベット仏教の最高指導者・ダライ・ラマ14世は「僧院には約2500人の僧侶が暮らしているが、周囲を武装警察部隊に完全に包囲され、食糧や物資を運びこむことができない状況が続いている」との声明を発表している。

一連の弾圧事件で注目したいのが、多くのチベット人が文字通り体を張って僧侶を守ろうとしている点だ。言論、出版、集会、結社などさまざまな自由があるが、すべての自由の出発点は「内心の自由」、つまり、心の中で思うことの自由である。その代表例が「信教の自由」だ。

最近は、日本国内の報道でも財政赤字にかこつけた「宗教課税論」が散見されるが、それは国民の自由の防波堤である宗教への国家権力の介入であり、「信教の自由」の侵害を意味する。私たち日本人は、チベットの人々が命を落としてまで守ろうとしたものの大切さにもっと思いを馳せるべきだろう。(格)

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