2010年度末の日銀総資産残高が約143兆円と、2006年3月以来の高水準となっている。

東日本大震災後の金融市場の安定のために、大量の資金供給を行なっていることが原因。10日付の日経新聞で報じている。

震災を受けて日銀がようやく金融緩和に本腰を入れていることが明らかになっているわけだが、復旧・復興の方針についてはまだ政府で明確に決まっていないため、当面の間は日銀の金融緩和路線は続く見通しだ。

注目すべきは、金融緩和の継続がデフレ脱却につながるかどうかだ。

これまでと環境が異なっているのは、すでに欧州中央銀行が利上げに踏み切り、アメリカでも利上げの動きが出始めていることだ(8日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙で米リッチモンド連銀のラッカー総裁が年内の利上げの可能性に言及)。中国も昨秋以来数度にわたって利上げを行なっている。

主要国のトレンドが金融引き締めにうつる中、日本だけが金融緩和を維持する状態が出現するわけで、結果的にインフレ・円安期待が高まる状況となっている。

さらに震災で日本の製造業の供給能力も低下し、原発事故で石油の需要が高まれば、一層インフレの可能性が生じることになる。

今のところ、急変する経済環境に対応しているうちに偶然デフレが解消されつつあるように見える。しかし、これでは悪性インフレを招くことになりかねない。明確な復興ビジョンを掲げた上で、成長戦略を打ち出せば、成長期待の裏づけのある健全なインフレにつなげていくこともできるのだが。(村)

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