民主党がまとめた復興基本法案(原案)に盛り込まれた震災国債の日銀引き受けについて反発する声が広がっている。

与謝野馨経済財政相は1日に「そういうことはありえないし、絶対にさせない」と一蹴。

野田佳彦財務相も「政府が検討している事実はない」と否定。

1日付朝日新聞では、「国債を日銀が直接引き受けるのは、戦前、昭和恐慌後に軍事支出を賄うなどの目的で実施された。しかし、終戦後に急激なインフレを招いてしまったため、財政法上、原則として禁止された」と否定的な説明をしている。

この朝日新聞の説明は、日銀引き受け反対の典型的な主張だが、多くの間違いと誤解を含んでいる。

戦前に日銀引き受けを断行したのは1932年11月から1935年末までの期間で、当時の蔵相は高橋是清だった。引き受けの目的は、軍事支出のためというよりは(満州事変の経費に使ったのは確かだが)、1929年の世界恐慌の影響で深刻な不況に陥った日本経済を立て直すことだった(昭和恐慌)。

この間の消費者物価の上昇率は年率3%未満であり、インフレが生じたとは言えない。

景気回復の後に、高橋蔵相が「出口戦略」として、財政支出を減らそうと(軍事支出の削減)した結果、軍部ににらまれ、高橋蔵相は2.26事件で暗殺されてしまう。

したがって、いわゆる「高橋財政」で、終戦後のインフレが起きたわけではないし、軍事費の増大を招いて日本を戦争に引っ張り込んだわけでもない。

それどころか、高橋財政は世界最速で恐慌から脱したケースとして世界中から称賛を浴びている。

日銀引き受け=軍事大国化=インフレ、といった主張はほとんど言いがかりに近い。

日銀引き受けによる財政出動を、震災復興の公共投資に当てれば、軍事大国化とは違い、健全な経済の復興と成長につながるはずだ。(村)

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