NEWSWEEK誌2月21日号が、エジプト政変で拘束されて有名になったインターネット活動家(cyberactivist)ワエル・ゴニム氏(30)に関するルポを、本人のコメント入りで載せている。ネットの匿名性と革命の関係に関する部分が興味深いので、抜粋して紹介する。タイトルはFで頭韻を踏んだ「The Facebook Freedom Fighter」(フェイスブックの自由の戦士)。

・ドバイ在住でグーグル社に勤務しているゴニムは語る。「フェイスブックは、息苦しい警察国家エジプトで革命を起こすには理想的な道具(the ideal revolutionary tool)になると思った。フェイスブックを完璧にブロックするのでない限り、政府は皆が書くことをブロックしきれないからね」

・ゴニムはフェイスブック上ではEl Shaheedという偽名などを使っていた。「僕の目的は、匿名の人物としてエジプトの活動家グループと一般国民の絆を強めることだった」「革命が勢いづいても、自分が誰かは明かさない(つもりだった)。だって、このエジプトがクソッタレ(f--ked)国家になったのは、どいつもこいつも自分が有名になりたがるからだよ。だから皆、最初は善意で何かを始めるのに、結局は腐敗してしまうんだ」

・エジプト入りしたゴニムが当局に拘束されると、万一の場合を託されていた人物が彼のページを引き継いだ。その人物は言う。「あのページを生かしておきたかった。運営にかかわる個人個人より、ページそのものが一番大事なんだ」

・ゴニムの実名が知られると、フェイスブック上に「僕らは皆ワエル・ゴニムだ」というページが登場するようになった。2週間近い拘束から解放されてみると、ゴニムは自分が一番避けようとしていた立場である「エジプト革命の顔」になっていた。ネット上の無名の人格は消えうせ、エジプト革命という指導者なき運動の指導者としてゴニムは任命されたのだ(anointed)

anointedとは「油を注がれた」の意味で、ユダヤ教のメシアに選ばれること、つまりイエス・キリストをイメージさせる単語である。「有名になろうとするからおかしくなる」と考え、匿名で活動を続けたゴニム。その姿勢が、ある時点で逆に「僕らは皆ゴニムだ」という広い支持を集め、ついに革命の「顔」になった。つまり、「自分」を消そうとした人間が、逆に皆が「自分」を重ねるためのシンボルになったという、不思議な逆説を含んだストーリーである。ネットの匿名性を武器として結集した力がリアルの路上に放たれるとき、人々はやはり、自分たちの運動を象徴する「顔」を求めるのだろう。(司)

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