北アフリカで、アルカイダ系組織によるテロの脅威が広がっている。

西アフリカのニジェールでは23日、仏原子力大手アルバのウラン鉱山などが攻撃を受け、21人が死亡した。この事件については、アルカイダ系の「西アフリカの唯一神と聖戦運動(MUJAO)」や、1月のアルジェリア人質事件の首謀者とされるモフタール・ベルモフタール氏などが、犯行声明を発表している。ベルモフタール氏は「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」の元幹部だ。

ニジェールのイスフ大統領は仏メディアに対して、実行犯が隣国リビアから流入したという分析を明らかにした。またイスフ大統領は、犯行グループが隣国チャドでのテロ計画も同時に準備していたとも語っている。

北アフリカでは、マリ北部を支配していたイスラム過激派に対し、仏軍などが介入して掃討作戦を展開。地域の制圧には成功したものの、過激派の戦闘員らがリビアなどに逃れて組織を再結成するなどしていたと見られる。内戦後のリビアでは国境管理が行き届かない状況が続いており、大量の武器も出回っているとされる。リビアがテロリストの巣窟となり、「第二のアフガニスタン」になるのではないかと懸念されている。

そうした中でオバマ米大統領は、アメリカが12年間にわたって続けてきたテロとの戦いを縮小する方針を明らかにしている。23日に国防大学で演説したオバマ大統領は、「この戦争は、他のあらゆる戦争と同様に、終わらせなければならない。それは歴史が我々に助言することであり、我々の民主主義のシステムが求めていることだ」と述べた。

内外から批判にさらされている無人攻撃機によるテロリストの攻撃については、「アメリカ人への継続的で差し迫った脅威」があり、身柄を拘束できない場合に限定する方針で、民間人への被害が出ないことが「ほぼ確実でなければならない」という基準を示した。他にも、キューバの米軍グアンタナモ基地にあるテロ容疑者収容所を縮小し、将来的に廃止する方針を示すなど、ブッシュ前大統領が路線を敷いたテロとの戦いを転換する方向性を明らかにしている。

財政問題などが深刻化する中で、オバマ大統領はシリア内戦への介入を先延ばしにするなど、内向きの姿勢を強めている。テロの脅威が去ったとは言い難い中で、オバマ大統領が対テロ戦からの引き上げを公言したことは、「世界の警察官」からのアメリカの後退をさらに印象付けると同時に、テロの脅威を効果的に抑止できるのか疑問を抱かせる。

25日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙社説は、オバマ大統領が否定しようとするブッシュ政権の路線がテロとの戦いの成功に結び付いたと述べ、「9・11を招いてしまった政策や、テロ対策をやったつもりで済ましていた以前の状態に戻っても安全だと示唆することで、オバマ氏はその(対テロ戦の)成功を無に帰す危険を冒している」と論じている。

アメリカは2014年にもアフガニスタンから兵員を引き上げる予定で、オバマ政権の"撤退戦略"は今後も加速していく。アメリカ不在の世界が混乱に陥らないか、オバマ大統領は外交政策を注意深く考える必要がある。

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