ブッシュ前政権を記念する図書館の開館記念式典が25日、米テキサス州の大学で開かれ、オバマ大統領を含む存命の大統領経験者や、ブレア元英首相など約1万人のゲストが出席した。アメリカでは退任後の大統領が、在任時代の資料を保管・展示する図書館をつくるのが習わしになっている。ブッシュ氏の図書館は、2億通の電子メールや4万3千件の資料を所蔵しており、5月1日から一般公開される。

ブッシュ前大統領は退任後、メディア露出を控えてきたが、この日の演説では往年の陽気さで笑いを誘いつつ、自らの任期を次のように振り返った。

  • 「民主主義における公務の目的とは、個人的な野望を実現することではありません。選挙で選ばれた政治家は、自分自身よりも大きな大義のために奉仕しなければならないのです」
  • 「最終的に、リーダーは自らがどのような信念(conviction)を持っているかによって評価されます。私の最大の信念、私の政権を導いた信条(guiding principle)は、アメリカは自由を広めるために努力する義務があるということです。私は、自由は神からの贈り物であり、一人ひとりの心にとっての希望だと信じています」
  • 「自由の恩恵の一つは、人々が反対の意見を言えるということです。公平に見て、私はその権利を行使する機会を、大いに創ってきたと言えます(聴衆笑)。将来の世代の人々が、この図書館に来て私の政権について研究するとき、彼らは私たちが己の信念に忠実であったことを発見するでしょう」

大統領時代の思い出がよぎったのか、感極まったブッシュ氏は、「神の祝福がありますように」と結ぶ際に思わず声を詰まらせ、席に戻る時には目から伝う涙をぬぐっていた。

アフガン・イラク戦争や金融危機への対応など、ブッシュ政権の評価をめぐっては賛否両論ある。しかし今月の世論調査では、ブッシュ政権を好意的に評価する人は退任時の31%から35%に増えており、否定的に評価する人も58%から44%に減っている(ウォールストリート・ジャーナル紙、NBCテレビ調べ)。

ブッシュ氏は在任中、イラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と名指しし、国民の自由を抑圧し、世界平和に挑戦する独裁者は許さないという、強気の姿勢で外交問題に臨んだ。実際に2003年からのイラク戦争では、化学兵器によるクルド人大量虐殺などで知られる独裁者サダム・フセイン大統領を打ち倒し、イラクに民主主義への道を開いた。

「悪の枢軸」という言葉が使われた2002年の一般教書演説で、ブッシュ大統領は「歴史が、行動せよとアメリカと同盟国を呼んでいます。自由のための戦いを戦うことは、我々の責任であり、名誉ある特権でもあるのです」と述べている。

シリアでは政府軍が反体制派の虐殺を続け、北朝鮮では独裁者・金正恩氏が国民を政治的迫害と飢餓で苦しめながら、核・ミサイル開発で周辺国を脅している。いま世界が求めているのは、「独裁を許さず自由を広げる」という強い信念を持った指導者なのかもしれない。

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