政府の宇宙政策委員会の専門部会は17日、日本の主力ロケットであるH2Aロケットの後継機「H3(仮称)」ロケットの開発を進めることを大筋で固めた。18日付各紙が伝えている。三菱重工業が主体で開発し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は開発や打ち上げの支援に回る。これは民間企業への委託でコストカットし、衛星打ち上げの受注において国際競争力を高めることが狙いだ。

H3ロケットの打ち上げ費用は約50億円で、H2Aロケットのおよそ半額だ。大型の衛星の打ち上げにも対応する。将来の有人宇宙飛行も見据えての開発であり、同部会長の山川宏・京都大学教授は13日、H3ロケットについて「中長期的な観点から直ちに開発に着手すべき」との考えを示していた(14日付日刊工業新聞)。

しかし、依然として予算の見通しは不透明である。同部会後の記者会見でも、総開発費用約1900億円は国が負担するとしているが、どの官庁の予算になるかは明言されなかった。2014年度に計上される予算は数億から数十億にとどまるとの見方もある(同)。

もし、数億円レベルの予算しか計上しないなら、有人宇宙飛行が実現するのは数十年後のことになりかねない。宇宙開発のフロンティアを拓くためには、「国家プロジェクト」のレベルで力を入れることが必要だろう。

政府は農業の減反政策に毎年約2000億円を費やしていることを考えると、予算配分のバランスを欠いていると言わざるをえない。また、日本の宇宙開発予算は年に約3000億円だが、アメリカはその10倍以上である。

これまで日本の科学者・技術者たちは、限られた予算の中で宇宙開発を進め、小惑星探査機「はやぶさ」などでも成功をおさめてきた。これだけの技術力があれば、十分な予算があれば、それだけ早くに有人宇宙飛行を実現することもできるだろう。どの分野への投資が将来の国富につながるか、再検討が必要だ。(晴)

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