日本の景気回復が着実に進んでいる。日経平均株価の終値は7日、リーマン・ショック(2008年)前の水準の1万4千円台を回復した。これは米国の雇用統計の改善や、欧州中央銀行(ECB)による利下げなど、海外での経済回復予想の高まりで円売り・ドル買いが活発となって、円安が一段と進み、輸出関連企業を中心に好業績が見込まれたためだ。

実は、昨年秋からの株高の主要因は海外投資家にある。5月8日付日経新聞によれば、海外投資家による売買は6割を超えており、4月にいたっては「買い」から「売り」を引いた買越額は約2兆6800億円で、史上最大だという。つまり、安倍首相が掲げる「アベノミクス」の「三本の矢」が軌道に乗りつつあるなかで、日本経済は海外投資家の注目を集め、実際に大量の資金流入が起こっているということだ。

しかし、株価が1万4千円台を回復したといっても、まだまだ満足するには早いだろう。バブル期の最高値は3万8千円台で、4万円に近かった。また、「安倍バブル」と揶揄するのも取り越し苦労にほかならない。なぜなら、日本はこの20年不況の間、景気回復の芽があったにもかかわらず、「清貧思想」に由来する増税や規制強化、金融引締めで、その芽を自ら潰してきたからだ。

一方、景気回復に沸く陰で、税金や保険料の負担が軒並み増す、あるいは増す予定になっていることも忘れてはならない。すでに今年1月から、会社員の「給与所得控除」の縮小、復興特別所得税の導入、退職金にかかる税金の計算方法の変更(以前より不利になる)が実施されており、10月からは厚生年金の保険料率の引き上げ、公的年金給付額の1%減額が予定されている。来年1月には現在活発になっている株式売買においても、その売却益、配当金にかかる税率が引き上げられるほか、4月には消費税率が8%に上がる。

増税をすれば国民の負担は増え、その分だけ自由に使えるお金は少なくなる。これは経済学者のハイエク風に言えば、「国民の経済的自由」を奪っていることにほかならない。また、経済成長には新たな産業やそれに応える投資が必要で、その投資の主となる富裕層に増税することも、自分の首を締めるような格好になる。

国家は国民に負担を強いるのではなく、国民にお金を実際に使ってもらえるような建設的なビジョンを打ち出し、その経済成長の恩恵によって税収を増やすのが望ましい。(原)

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2013年1月3日付本欄 【2013年展望・経済編】増税不安と金融緩和期待が交錯するなかで、新経済秩序を創れるか

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