シリア内戦の開始から15日で2年が経った。アサド政権による反体制派への武力弾圧によって、これまでに国連の推計で7万人の死者が出ているが、9万人に達するという説もある。内戦初期から、反体制派は西側の軍事介入を求めてきたが、アメリカなどがこれを躊躇したまま、戦闘が長引いている。

その中で英仏両国はこのほど、アサド政権打倒に向けた反体制派への武器の供与を、他のEU加盟国に提案した。EUでは、シリア内戦を戦う政府軍と反体制派のどちらにも武器を提供しないという取り決めがあるが、5月末にこの取り決めの更新期限を迎えるのを機に撤廃しようというのだ。

こうした英仏の動きに対して、15日のEU首脳会談ではドイツなどから反対の声が上がった。しかし、取り決めをEUが変更しない場合、両国は単独でも反体制派への武器供与を行う構えを見せている。キャメロン英首相は「我々独自でやることも、想定外ではない。ありうる」と述べており、ホランド仏大統領も「フランスは自ら責任を取ることになるだろう」と話している。

オバマ米政権が、米軍の海外派兵に消極的な姿勢を取っていることを受けて、英仏などが独自に海外での軍事作戦を行うケースが目立っている。2011年のリビア内戦では、英仏が介入を求めたのに対し、オバマ大統領は泥沼化を恐れて躊躇。アメリカは最終的に介入作戦に参加したが、それでも「後方から率いる(lead from behind)」という自己矛盾したスローガンを掲げて、あくまで後方支援に徹するというスタンスだった。

イスラム過激派が分離独立運動を行っているアフリカのマリ共和国北部では、1月にフランスが軍事介入して掃討作戦を行っているが、「世界の警察官」アメリカの介入は、無人偵察機によって収集した空爆目標情報の提供などに限られる。リビアから流入した武器で力を付けた過激派が、マリ北部を制圧したのは昨年3月のことだが、アメリカの介入がなかったため最終的にはフランスが動かざるを得なかった。

ユーロ危機を抱える苦しい状況でも、国際秩序の維持のため、英仏が海外派兵せざるを得ない状況が生まれている。「アメリカの介入はもはや期待できない」という前提のもとで、自分たちで問題を解決しようという動きである。財政難が国防費の削減につながり、オバマ大統領の「不介入主義」がそれに輪をかけるかたちで、アメリカは「世界の警察官」の役割から後退していっているようだ。

日本にとって、これは他人事ではない。朝鮮半島有事や中国による台湾への武力侵攻のリスクなど、東アジアには様々な軍事衝突の火種がくすぶっているが、アメリカがアジアの有事にどこまで関与する気があるのかは定かでない。「アメリカの介入に期待できない」という前提のもとで、国防体制を全面的に見直すべき時が来ている。

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2013年3月10日付本欄 アメリカは自虐的なイラク戦争史観を克服すべき 「世界の警察官」の復活を

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2013年4月号記事 オバマ2期目は非介入主義になる - 伊藤貫のワールド・ウォッチ

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