森喜朗元首相は21日、ロシアのプーチン大統領とモスクワで会談し、安倍晋三首相の4月末の訪ロの筋道をつけた。22日付各紙が報じた。

今回、森元首相が特使として選ばれたのは、プーチン大統領との仲の良さを買われてのものだ。ロシア人は、顔見知りであることを重視するが、森元首相は今回で公式に16回目の面会で、2人は「ヨシ」「ウラジーミル」とファーストネームで呼び合う仲。この関係を活かし、安倍首相の訪ロへの下地を作った。プーチン大統領は「日ロ関係の発展のための良いステップとなることを期待している」と安倍首相の訪ロを歓迎する姿勢を示している。

森元首相はまた、両首相がお互いを訪問しあう「シャトル外交」を提言した。ロシアは主要国の中で中国とだけシャトル外交を行っており、習近平総書記は3月、初外遊先にロシアを選ぶという。ロシアにとって中国との関係は「死活的に重要だ」と言われている。

ただ、ロシアには日本との関係を深めたい理由がある。

アメリカで起きているシェールガス革命で、アメリカは自前で天然ガスを調達できる見通しが立ち、これまでアメリカ向けに液化ガスを輸出していた中東のカタールが、欧州向けに輸出するようになった。主力だった欧州向けガス輸出が減少したロシアは、液化ガスの日本への輸出を増やしたいのと、シベリア開発に日本の技術や資金の協力を得るために、日本に接近したいという思惑があるようだ。

日ロの協力の大きな妨げとなっているのは、北方領土問題だ。

森首相(当時)とプーチン大統領は2001年3月、北方領土の帰属問題を解決して平和条約を結ぶという「イルクーツク声明」に署名していた。しかし、その1カ月後に森首相は退陣。

2010年にはメドベージェフ大統領(当時)が国後島を訪問して領有をアピールし、政治的な日ロ関係を冷え込ませた。

しかしその後、大統領に返り咲いたプーチン氏が2012年3月に、北方領土について「引き分け」と発言し、解決に意欲を示したことが、今回の森元首相の訪ロにつながった。

日ロが関係を強化することは、中国の覇権主義を牽制する上でも、非常に重要だ。日本は親日国でもあるロシアからの「秋波」をしっかりと受け止め、新しい日ロ関係を築くべきだろう。(居)

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