安倍政権は、アベノミクスの成長戦略の大きな柱の1つに医療分野を据えており、民主党時代に発足した「医療イノベーション推進室」を「健康・医療戦略室」と名称変更し、22日に発足させる。iPS細胞を使った再生医療の実用化や新薬開発の促進をテーマとする。21日付各紙が報じた。

民主党政権下の「医療イノベーション推進室」は、日本の製薬や医療機器の開発・承認のスピードアップを目指していた。だが、推進室の室長を務めていた、がん治療薬研究の権威である中村祐輔・東大教授は2011年末、たった1年で辞任し、翌年には研究拠点を米シカゴ大学に移している。

中村教授は、室長として5年間は頑張るつもりで臨んだが、関係省庁は自分たちの権限や利害を主張し合うだけで物事が前に進まず、我慢ができずに渡米を決意したという。

中村教授が日本を見限ってしまったように、日本の医療開発の遅さはあちこちで弊害を生んでいる。たとえば、国内で新薬を開発しようとすると細かな法律の規制に沿って膨大なデータを用意したり、煩雑な手続きを踏まなければならず、海外で開発された新薬の承認を得るのにも数年かかる。また、医療機器についても薬と同じように過重な規制がある。

21日付読売新聞は、医師が遠隔地から手術できるアメリカ製の手術ロボット「ガリレオ」が日本で売れているという記事を紹介しているが、その部品には日本製品が多く使われているだけでなく、機械そのもののアイデアもすでに1970年代に日本の研究者が構想していたという。

中村教授のケースが象徴するような優秀な頭脳の国外流出を防ぎ、3兆円にもおよぶ医療関係の機器の輸入超過を解消するためにも、日本の医療の改革が望まれる。

新しく発足する「健康・医療戦略室」は、iPS細胞を利用した再生医療の実用化や新薬の開発などを掲げるが、それらの推進と同じぐらいの力で医療に関する過剰な規制を緩和・撤廃すべきではないだろうか。それが、日本の医療の国際競争力を高めることにもつながる。(居)

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