原子力規制委員会(以下、規制委)の専門家チームが、青森県の東北電力・東通原子力発電所の敷地内の断層について、事実上、「活断層」と認定。現在、停止中の原子炉の再稼働が当面難しくなった。だが、地震予知に成功したことのない地震学に基づく活断層の認定には意味がないという議論が必要である。

19日付各紙によると、専門家チームは18日の会合で、東通原発の断層について、「13万~12万年前以降に活動した、耐震設計上、考慮する活断層の可能性が高い」とする報告書案を了承。今後、他の専門家からも意見を聞いて、最終報告書を作成し、規制委に提出する。

焦点となっているのは、東通原発の敷地内にある2つの断層。原子炉建屋の真下にあるわけではないため、福井県の敦賀原発と違って「廃炉」には至らないが、耐震補強などの様々な追加整備が必要となり、膨大な資金と時間を要するため、再稼働の見通しが立たなくなる。東北電力も明確に「活断層ではない」という証拠を示せておらず、このままでは再稼働は難しい状況だ。

だが、本来この問題で議論すべきは、「断層が、活断層か否か」ではなく、「活断層と認定することにどれだけの意味があるのか」という点である。

1995年の阪神・淡路大震災をはじめ、2000年の鳥取県西部地震、04年の新潟県中越地震、07年の能登半島地震、同年の新潟県中越沖地震、08年の岩手・宮城内陸地震のいずれも、活断層のない場所で起きている。もちろん、地震学者たちはこれらの地震を予知することができなかった。

以前、弊誌が取材した京都大学防災研究所地震予知研究センターのある教授は、地震予知の現状をこう吐露している。「地震も膨大なデータがあっても分からないことがたくさんあります。ましてや、現時点では予知をできるような段階にはありません」「現在の地震研究ではシミュレーションが幅を利かせていますが、シミュレーションはあくまでも仮想現実。自然はもっと複雑なものです」(2008年10月号本誌記事を参照)

現在、規制委の専門家チームは「活断層か否か」という基準で“原発狩り"を行っているが、学者として本当に誠実な姿勢を貫くならば、「地震学者は、地震を予知できない」「活断層の有無によって地震が起こるかどうか、判断できない」「活断層の有無によって、原発を止めたり動かしたりすることには意味がない」と政府に直言し、原発をめぐる活断層の問題に終止符を打つべきである。(格)

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2013年1月26日付本欄 止まらない「活断層」による原発狩り 議論を打ち切り早期再稼働を目指せ

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2013年1月25日Web記事 原発「活断層」調査 「活断層即廃炉」は非科学的な“魔女狩り"だ

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