今年の正月も多くの日本人が神社・仏閣に初詣に出かけた。しかしその日本が、世界4位の「無宗教国家」であると世界中に知られてしまった。昨年12月にアメリカの調査機関「ピュー・リサーチ・センター」が発表した調査結果をもとに、この国の行く末を考えてみたい。

同調査では、日本人の57%が無宗教、36.2%が仏教徒となっている。世界全体では、キリスト教徒31.5%(約22億人)、イスラム教徒23%(約16億人)、無宗教16.3%(約11億人)、ヒンズー教徒15%(約10億人)、仏教徒7.1%(約5億人)の順だ。

この「無宗教」11億人のうち、中国が7億人を占めている。だが驚くのは、比率でいけば無神論・唯物論を国是とする中国の無宗教52.2%よりも、日本の無宗教の比率の方が高いということだ。中国では民間信仰(folk religion)21.9%、仏教徒18.2%となっている。

これを世界地図で色分けすると、比率50%以上の「無宗教国家」は、わずか5カ国(チェコ、北朝鮮、エストニア、日本、中国)しかない。日本はいつの間にか「仏教国」から「無宗教国家」として世界から見られているのだ。

この調査結果を見て、ネット上では反論が相次いだ。「定義でかなり変わるだろ」「日本人は、なんだかんだ仏教と神道なんだよ。大晦日と元旦は、たいていお宮に行くし、七五三も祝う。死んだらたいてい仏葬だしな。まあ信仰は薄いが対立なくて良いじゃん」など。

だが、外国に行って入国審査の際、宗教欄に「無宗教」と書く日本人が多いというのは、よく言われてきたことだ。「あの世などは信じているが、無宗教」というのは、他の国の人々から見れば、きわめていい加減で信用できない人に見えるのだ。宗教とは、人間にとって最も大切なものであり、この世の人間を超えた崇高な存在を信じることだからだ。

この調査結果を、日本のマスコミはほとんど報じていないが、マスコミ自体が宗教の真の姿をほとんど報じてこなかったことと、日本の公教育から宗教色が一切排除されていることが、日本人が胸を張って「宗教を持っている」と言えない大きな原因だ。

その根本原因は、第二次大戦敗戦後、占領軍が「小国の日本がなぜこれほどまでに強かったのか。それは宗教心が強かったからだ」と見抜き、日本人を骨抜きにするために公の場から宗教を排除したところにある。その結果、見事に日本人は「精神棒」を抜かれ、神仏や国家のために命を懸けるという崇高なスピリットを失った(もちろん例外はある)。そしてむしろ宗教を信じる人を軽蔑したり嘲笑する風潮が蔓延している。

今起きている国防の危機、経済危機、社会保障問題など、すべてを解決するカギは、日本人が戦後見失ってきた「忘れ物」を思い出し、宗教心をしっかりと取り戻すところにある。日本が本当に「戦後」を脱するためにも、この調査結果を真摯に考えなければならないだろう。(仁)

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